平均を上回る収益性

経営戦略の基礎を学ぶ -主な論点について-」の通り、経営戦略論に関する学びをまとめていきたいと考えている。

今回は「平均を上回る収益性」についてをまとめていきたい。

平均を上回る収益性

企業は成長していくために、平均を上回る収益性(above-average-returns)を達成するために戦略を立て行動をしていく。

書籍によって微妙な表現の違いはあるが、ここでは同じものを指していると捉えて、その定義となる表現を書いていく。

まずは、戦略経営論からの一節である。

平均を上回る収益性とは、ある投資家が同じ程度の大きさのリスクをもつ他の投資案件から期待できる収益の水準を超えた収益性のこと。

戦略経営論 競争力とグローバリゼーション (著:マイケル・A・ヒット他)

わかりにくいのだが、私の捉えた理解で解説していきたい。

ある投資家が、投資したいと考えているA社、B社、C社とあったとする。その際、投資に失敗するリスクは同じと考える。

投資による収益を調べてみた結果、

  • A社に投資すれば100円の収益
  • B社に投資すれば 80円の収益
  • C社に投資すれば. 90円の収益

以上のような収益が期待できるとすると、この時の平均収益は90円である。

つまり、A社は平均を上回る収益性をもつ企業だと判断でき、当然だがA社に投資するということになる。

こうした比較をより大きなレベルである業界内のグループや業界全体で比較して、その業界平均の収益性を計算し、上回っているのであれば、その企業は平均を上回る収益性を達成している企業となる。

平均を上回る収益性と会計上のパフォーマンス

平均を上回る収益性を達成できているかを調べるためには、会計上のパフォーマンスについて理解する必要がある。

会計上のパフォーマンス(accounting performance)とは、ある企業の公開された貸借対照表・損益計算書をもとに算出される競争優位の指標である。

企業戦略論 戦略経営と競争優位 上 基本編(著:ジェイ・B・バーニー)

貸借対照表や損益計算書に用いられる会計規則・会計原則は、各企業共通のものであり統一されたルールに則り作成されている。

そのため、貸借対照表や損益計算書に記載されている値から、自社が平均を上回る収益性を達成できているか確認するために指標を設ける事ができる。それがこの会計上のパフォーマンスである。

会計上のパフォーマンスを調べる上において用いられるのが、会計比率(accounting ratio)と呼ばれるもので、たとえば、

  • 総資本利益率(ROA): 税引後利益 / 総資産
    • その企業の全ての投資に対するリターンの尺度で大きい方が良い

といったものがある。

会計比率についての説明は割愛するが、定量的に企業活動を把握するのに有用である。

上記を踏まえ、企業戦略論では戦略経営論よりも会計的な表現を用いて、平均を上回る収益性を説明しているが、こちらの方がわかりやすいとは思う。

企業パフォーマンスの水準を知るには、会計比率を何らかの基準に照らし合わせる必要がある。一般的にこの基準となるのが、会計比率の業界内平均値である。

会計比率の分析を行った結果、そのパフォーマンスが業界平均を上回る企業は、平均を上回る会計上のパフォーマンス(above-average accounting performance)を上げているといえる。

企業戦略論 戦略経営と競争優位 上 基本編(著:ジェイ・B・バーニー)

私の中では、戦略経営論における「平均を上回る収益性」と、企業戦略論における「平均を上回る会計上のパフォーマンス」は同意と捉えている。

以上が平均を上回る収益性に関する説明である。

平均を上回る収益性を達成するために

それでは、平均を上回る収益性を達成するために企業は何をしなければならないのだろうか。

平均を上回っているということは、他の企業に比べて優位となる何かを持って行動に移しているということになるはずだ。

裏返して言えば、他の企業に比べて優位となるために何らかの行動を移さなければ平均を上回る収益性は達成できないということである。

ただ闇雲にビジネスをしているだけでは、当然ながら他の企業に比べて優位となるための行動は行われにくいだろう。

そのため、企業は戦略を立案し、その戦略に沿って実行していくことが求められる。

そして戦略を練るためには、外を知り内を知っておく必要がある。

これをまとめた表現が戦略経営論に書かれている。以下に引用させて頂きたい。

外部環境や内部組織の分析から得た情報に基づいて、企業はビジョンとミッションを決定し、戦略を策定する。

この戦略を実行するため、企業は戦略的競争力を獲得し、平均を上回る収益性を達成する方向に向かって行動に移さなければならない。

戦略経営論 競争力とグローバリゼーション (著:マイケル・A・ヒット他)

まさにここで言い表しているのが、戦略経営のプロセスそのものである。

今後はこの平均を上回る収益性を達成するために、必要なプロセスを一つずつ紐解いていくこととなる。

今回のまとめ

今回は平均を上回る収益性とは何かについてをまとめた。敢えて引用を避けて、自分の言葉で要約すると以下の通りとなる。

  • 平均を上回る収益性とは、業界もしくは複数の投資案件の平均を上回る会計上のパフォーマンスを上げていること、もしくは期待した収益の水準を上回っていること
  • 会計上のパフォーマンスは、会計比率を用いて評価される。
  • 企業は平均を上回る収益性を達成するために戦略を立案し、実行に移す必要がある

今回はここまでだが、引き続き経営戦略の学びを深めていくつもりだ。

参考書籍について

参考書籍の一覧については、「経営戦略の学びに用いた関連書籍」に参照先の書籍をまとめている。

引用先を確認されたい方は、そちらを参照頂きたい。