リフレクション
今回は熊平 美香著「リフレクション」(以降、本書とする)という本の学びについてをまとめる。
内省を題材とした書籍を読むのは初めてであったが、読んで良かったと思える内容の本だった。
概要紹介
リフレクションとは、自分の行動や振る舞いについてを内省する行為のことで、日本語訳としては「内省」と言う言葉が用いられることが多い。
一見内省という言葉を使ってしまうと、良くない行動や失敗などを反省し次につなげるという意識が強い面もある。
しかし、リフレクションという行為はそういったネガティブな面での振り返りだけなく、良かったことなどについても振り返ることにも用いても何ら問題ない。以下にリフレクションを行うことの目的を本書から引用する。
リフクレクションの目的は、あらゆる経験から学び未来に生かすことです。
どのような経験にも、たくさんの「叡智」が詰まっています。経験を客観視することで新たな学びを得て、未来の意思決定と行動に活かしていく。これがリフレクションです。
引用にもあるように学びを未来に活かすことができれば、それがリフレクションとなると私は捉えている。
本書では、5つのメソッドを用いてリフレクションの具体的な方法を説明している。
- 自分を知る
- ビジョンを形成する
- 経験から学ぶ
- 多様な世界から学ぶ
- アンラーンする(学んだことかを手放す)
メソッドは5つあるものの、リフレクションをする対象や捉え方が異なるだけで、基本は同じであるように思っている。今回はその中から、自分の中で学びが質が高かった点を抜粋し学びとしてまとめていきたいと思う。
本書からの学び
それでは具体的に、本書からの学びを紹介していきたい。
「認知の4点セット」
リフレクションを行うにあたり、土台となるフレームワークがある。それがこの「認知の4点セット」と呼ばれるもので、「認知」の枠組みを整理することができる。
このフレームワークの目的は、メタ認知(認知していることを認知する)力を高めることです。
事実や経験に対する自分の判断や意見を、「意見」、「経験」、「感情」、「価値観」に切り分けて可視化することによって、自分の内面を多面的に深掘りし、柔軟な思考を持つことができるようになります。
私の理解では、この「認知の4点セット」を用いることで、起きた事象を俯瞰的な視点で見るようにするためのフレームワークだと捉えている。
発生事象に対し以下のような問いを設定することで、「意見」、「経験」、「感情」、「価値観」に切り分けることが可能となる。
- 自分はどういった「意見」があるのか
- その意見は、何の「経験」に基づいているのか
- その「経験」にはどういった「感情」が紐づいているのか
- その「意見」の前提にはどのような「価値観」が存在しているのか
本書では、上記した5つのメソッドを用いるにあたり、この「認知の4点セット」がベースとなっている。
この土台を基本として話が発展していくことから、重要な点としてまとめておきたい。
問いの立て方で内省の成果が変わる
本書を読んで感じた点の一つとして大きいものが、「問いの立て方で内省の成果が変わる」という点である。
本書に記載されている問いは非常に秀逸で、リフレクションを行うにあたり誰にとっても利用できる質問設定がなされている。
学びのまとめとして、5つのメソッドに関連する問いを整理しておくこととする。
自分を知るリフレクション
- 意見 :やりがいを感じた仕事をひとつ挙げてください。
- 経験 :それはどのような経験でしたか?
- 感情 :どのような気持ちでしたか?
- 価値観:そこから見えてくる、あなたが大切にしている価値観は何ですか?
ビジョンを形成する
- 意見 :現在、実現したいことは何ですか?
- 経験 :その意見の背景にはどのような経験がありますか?
- 感情 :どのような感情が、その経験に紐づいていますか?
- 価値観:そこから見えてくる、あなたが大切にしている価値観は何ですか?
経験から学ぶ
経験から学ぶリフレクションは、少し応用的な問いたてが必要になる。
社会人なら仕事、学生なら勉強や催事の準備といったものおいては、場当たり的にこなすという可能性は低く、必ずそこには計画が存在する。
まずはその計画がどういった点であったかから振り返るための問いを設定することでリフレクションを行なっていくこととなる。
- 計画 :どのような計画を持っていましたか?
- 仮説 :どのような仮説を持っていましたか?(意見)
- 前提1:その仮説の前提となる過去の経験は何ですか?(経験)
- 前提2:その経験には、どのような感情が紐づいていますか?(感情)
- 価値観:そこから見えてくるあなたが大切にしている価値観は何ですか?
多様な世界から学ぶ
このメソッドは、相手の意見を傾聴する時に用いるという視点で問い立てを設定する。
主語が自分ではなく相手になることで、相手がどういった考えや意見、価値観を持っているかを理解することができる。
- 経験 :相手には、どのような経験があるのでしょうか?
- 感情 :どのような感情がその意見に紐づいているのでしょうか?
- 価値観:相手は何を大切にしているから、その意見に固執しているのでしょうか?
アンラーンする
まず「アンラーン(Unlearn)」という言葉が何かを引用にて説明する。
「アンラーン(Unlearn)」とは学びを意味するラーンに逆の動作を表すアンがついた言葉で、過去の学びを手放す行為です。
アンラーンの有効性はいくつかあるのだと思うが、私の中では自分の中の固定概念や、「これはこういったものなのだ」という価値観を手放すことに用いることができるものだと理解している。
そういった面で、自分の中で納得ができていない、新しい考え方や手法を取り入れる時には、このアンラーンを用いることが有効かもしれない。
- 過去の振り返り:過去の成功体験を振り返りましょう
- 価値観 :過去の経験によって形成された者の見方や判断基準(価値観)は何ですか?
- 感情 :成功体験に紐づく感情は何ですか?
所感
内省を薦めるWebサイトの記事を多数見た事があるが、本書はその中でも圧倒的にわかりやすく、かつ実践的な内容でまとめられている。
文書表現もわかりやすく難解な文章表現が無いことから学生から社会人まで、自己成長をしたいであれば誰でも手に取って読むことができる一冊だと思う。
特に内省に対する問いの設定が秀逸であることから、自分なりな解釈をせずに本書の通りに内省をするだけでも確実に自己成長に繋がるだろう。