パーパスを規定する4ステップ
本記事は、『PURPOSE パーパス 「意義化」する経済とその先』(岩嵜 博論、佐々木 康裕著、以降本書とします。)からの学びをまとめています。
本書はパーパスという言葉を理解したいと思い読み始めた一冊です。今回は前回の続きでパーパスを規定するための4つのプロセスについてまとめます。
パーパスを規定するための4つのプロセス
前回の「パーパスを規定するために」の記事の中で、パーパスを企業活動の中心に置く重要性をまとめました。そして、そのパーパスを規定するためには4つのプロセスに沿って進めていくという良いということ学びました。
その4つのプロセスとは以下の4つであり、改めて本書から引用させて頂きます。
パーパス規定のプロセスは大きく次の4つの要素で構成される。
このプロセスのイメージを図にしたものが以下となります。(本書で紹介されている図を引用させて頂いています。)
今回はこれら1つ1つについての流れを見ていきます。
STEP1:自組織の探索
「STEP1:自組織の探索」では、主に3つの要素を明らかにする必要があると本書では述べています。
- 歴史的資産
- 強み・競争優位性
- 大切にしている価値観
これら3つの要素をまとめることで、自組織についてより理解を深めることができるようになります。
私の理解では、特に「大切にしている価値観」を見出すことが重要なのではないかと思っています。
この価値観は、自組織の行動観点やカルチャーとして現れてくるもので、パーパスが感覚として現れているものなのだと考えています。
本書においては、この自組織の探索を行うにあたり、デプスインタビューを行うことが良いとしています。
STEP2:社会の探索
続いては、「STE2:社会の探索」です。
社会の探索を行うことで、自組織が解決すべき課題が何かを見出すためのステップであるというというのが私の理解です。
興味深かったのは、本書ではそうしたことを『「兆し」を捉える』として表現しています。以下がその引用となります。
ここで大切なのは、現在起こっていることだけではなく、将来大きなインパクトになりそうな「兆し」を捉えることだ。
社会の探索では、リサーチとワークショップが基本的なアプローチであるとしています。リサーチで収集した情報をワークショップを通じて整理をし「兆し」を捉えていきます。
「3つのP」の視座
社会の探索を行う上では、いかに示す3つのPの視座を持って考えると良いとのことです。
- Problem 社会課題
一つ目は「Problem 社会課題」です。
世の中における様々な社会課題に目を向け、自社がどういった課題に立ち向かうのかを模索する必要があります。国連のSDGsで設定されている17の目標なども視野に探索するのも良いでしょう。
- People 生活者
2つ目は「People 生活者」です。
若者世代の関心を学ぶといったこともその一つで、各世代の価値観や行動の変化を捉えるといったことも社会の探索を行う上では有効です。
引用を通じて、本書からのアドバイスを記載します。
生活者の変化を捉えるために、普段ニュースなどを見るときにも、事象から価値観を抽象化し、さらにそこから他の行動や意思決定にどう影響が及ぶかを想像する癖をつけると良い。
- Policy 政策・規制
3つ目の最後は「Policy 政策・規制」です。
本書でもパーパスにおいて、社会のあり方を決める政策・規制の変化は重要であるとしています。日頃からニュースや重要なキーワードにはアンテナを張って動向を掴むことが有効です。
STEP3:統合と言語化
自組織の探索と社会の探索が終了したら、統合と言語化のステップに入ります。このSTEPが最も重要なステップであると捉えています。
このステップではワークショップで行うと良いとしており、その中でまず自組織の探索の整理と社会の探索の整理を行います。
ワークショップにおける、自組織と社会、それぞれの整理においてはキーワードを抽出することが大切で、ポストイットに書いて貼るというような方法が有効なようです。
コンセプトに統合する
キーワードが出揃ったら、それらを統合してパーパスのコンセプトを導き出します。いかにその時のポイントを引用します。
単にどちらかの要素を選択するのでも、足し合わせるのでもなく、両者の世界を共存させる新たな概念を見つける。
「自組織」の「社会的」な存在意義というパーパスの両側面を体現するのがこのプロセスだ。
このコンセプトに統合するというステップが最も難しいのではないかと考えています。
目指したい方向性とワードがずれると、異なった方向へパーパスが規定されてしまいますし、関係者の共通認識を合わせて、言葉の定義を行うことも簡単ではないように思えます。
一方で、この工程で適切なワードを見出すことができたのであれば、パーパスが定まり出したことの表れだとも言えるでしょう。
パーパスを言語化する
コンセプトに統合したことで、パーパスの片鱗は見えてきました。
そこで次にパーパスを明文化するためのステートメントを作成します。このステートメント作成において有用となる引用を以下に紹介します。
パーパスは組織を束ねる北極星であり、周囲のステイクホルダーを巻き込むツールでもある。
・・・。パーパスを形作る言葉に求められるのは、明確な方向感をわかりやすくする表現することだ。
本書で紹介されている例としては、ソニーの、
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」
というステートメントが紹介されています。
まさに、ソニーという会社の存在意義をうまく表現する素晴らしい言葉です。
この言葉はおそらく何年経っても、世代が変わったとしてもソニーという企業精神を表し受け継がれていく言葉になっていくのだと思います。
本書ではこの節の最後に素晴らしい表現でまとめてくれています。
時を越えるということはパーパスにおいても重要であるということをうまく説明してくれています。
本質的なものは、時間を超える普遍性を持つ。・・・。そのため、一過性の言葉ではなく、長い年月にわたり使い続けられる言葉を用いて表現する必要がある。
STEP4:具現化
最後のステップは具現化です。
私の理解では、実質的にSTEP3がパーパスの言葉を規定するもので、その言葉にしたパーパスって、具体的にどういったものなの?という点に応えるためのステップであると捉えています。
方法としては動画を作って、視覚的にパーパスのイメージを起こしたり、体験やイベントなどを行う事になります。
よりパーパスを身近に感じられるようにする、ということがこのステップの営みです。
汎用性のある4つのステップ
この4つのステップを学べたことは、私の中ではかなり大きかったと思っています。
その理由は、非常に汎用性が高いアプローチであり、様々なシーンにおいて用いることができると考えたからです。
例としては、自分の将来を考えるための自己分析などに用いても良いかと思います。
それ以外にも新たなプロダクトを生み出す際のコンセプト設定などにおいても、この4つのステップは用いることができるのではないでしょうか。
これらのステップは、視点を個人にあてれば自己分析ですし、プロダクトにあてればコンセプト、組織にあてればパーパスになる、そういった感覚で活用できると思っています。
次回、最終回として、総括的に本書からの学びを整理する予定です。複数回に渡るまとめも次回で最後です。
本当に素晴らしい書籍に出会いました。