GRIT やり抜く力

『GRIT やり抜く力』(アンジェラ・ダックワース著、以降本書とします。)という本をご存知でしょうか。

私の中で、最も子供達に身につけてほしいと願う力の中の一つで、子どもたちの教育やコーチングに携わられる方には読んで頂きたい本です。

初版は2016年ですが、5年経つ今でも色褪せる内容ではありません。今回はその『GRIT やり抜く力』についてまとめます。

本書を読もうとしたきっかけ

私は休日に少年野球のコーチをやらせて頂いています。その中で良く声を聞くのが、

  • 野球の指導は厳しく、子供に始めさせるには抵抗がある
  • 野球を始めると野球漬けになり、家族の時間が奪われる
  • 保護者の方のお手伝いが多く、そこまで子供の面倒を見ていられない

といった類の声です。

確かに事実である部分でもあり否定はできません。しかし、そう言った声がある中でも、子供に野球をやってもらいたいと願う保護者の方も一定数存在することも事実です。私自身もその中の一人です。

では、何故、自分の子供に野球をやってもらいたいのか?

当然、子供達が野球がやりたい言っていることは間違いないですが、保護者の方にとっても、子供に野球を始めさせたい何かがあるから、チームの門戸を叩いているのだと考えています。

私も少年時代は野球少年でしたので、野球を通じた様々な思い出があります。良い思い出ばかりではなく、辛い思い出の方が多いかもしれません。

ですが、今、間違いなく言えるのは、野球をやっていて良かったということです。

本書は、その漠然としていてうまく言葉に言い表せない、

  • 保護者の方が「何故、子供に野球を始めさせたいのか。」
  • 野球を経験者の方にとっては「何故、野球をやっていて良かった」と言えるのか

という問いに答えるヒントがあるのではないかないかと考え、本書を手に取りました。

概要紹介

題名にもなっている「GRIT」とは、物事をやり抜く力を表します。

大人であれば就いた仕事、子供であれば勉強や習い事をするにあたって、辛くなって辞めたくなったり、諦めたくなるような事があるでしょう。しかし、そういった困難にも打ち勝ち、地道に努力を続けることができた人が成功を手にしています。

その、一度やると決めたら地道に努力を続けることができるようになるための力が、この「GRIT やり抜く力」です。

世界的に有名なアスリートや芸術家などはわかりやすい例で、本書でもやり抜く力の達人と呼ばれています。

そのGRITの鉄人がどうやってGRITを身に着けたのか、そしてそのGRITとは身につけることができるのかといった点で本書の内容は展開されていきます。

尚、著者のアンジェラ・ダックワースさんはTEDと呼ばれる、世界の著名人が集うプレゼンテーションの場にも登壇されています。

以下がそのプレゼンテーションの動画ですので、本書の内容のきっかけをつかむのに良いプレゼンテーションになっていますので、よろしけば御覧ください。

アンジェラ・リー・ダックワース「成功のカギは、やり抜く力」

本書からの学び

それではここからは本書からの学びをまとめます。

「才能」で片付けてはいけない

とてつもなく運動ができる人や頭の良い人と出会うと、この人達は才能があるからすごいと決めつけてしまうことがあります。

このよう状態になってしまうことを、本書では神格化するという言葉を使っています。

確かに生まれながらに高い才能を持って生まれてきた人というのは少なからず存在します。ですが、その素晴らしい才能を持った人たちが全て社会に出て成功しているかというとそうではありません。

社会で成功している人たちは、間違いなく努力をしています。

努力と才能の「達成の方程式」

その努力と才能との関係性を方程式としてうまく表現をしているのが、努力と才能の「達成の方程式」です。過去に記事にしたことがありますので、内容はそちらを御覧ください。

「やり抜く力」の鉄人の4つの特徴

それでは、「やり抜く力」が優れている人はどういった特徴があるのでしょうか。

本書では、有名なアスリートの方や小説家といった「やり抜く力」の鉄人である本人と、その鉄人を育てた家族の方へのインタビューなどをもとに、4つ特徴を見出しています。

そのキーワードは「興味」「練習」「目的」「希望」です。以下にまとめていますので詳細はそちらを御覧ください。

「やり抜く力」は身につけられるか?

答えは「Yes」です。

「やり抜く力」は少年少女時代に身につけることが重要で、通常の学業以外の場である課外活動をするのが良いと本書では言っています。

課外活動の重要性

体系的な練習が必要な課外活動は「やり抜く力」を伸ばすのに効果的だと思っている。こうした課外活動には、ほかの活動にはない重要なふたつの特徴がある。

本書では上記のように課外活動が効果的であるとしています。

この点が私が本書を読んだきっかけである、「なぜ少年野球をするのか?」に繋がる部分でもあります。

ひとつは、親以外のおとなの指導を受けること(温かくも厳しい指導者が望ましい)。もうひとつは、このような活動に取り組めば、興味を深め、練習に励み、目的を持ち、希望を失わずに取り組むことを学べるからだ。

やり抜く力を身につけるにあたっては、親を手本にするということも本書では言っています。

それに加え、課外活動に参加し、他のおとなの指導を受けることで、社会性を学びつつも、努力をした成果を認められる経験がやり抜く力の育みに役に立つのだと私は捉えています。

そして、二つめの特徴は、課外活動を1年以上続けるという点になります。

長期的に課外活動を続けている子の方が、あまり行っていない子よりも成績や行動面の良さが表れるという研究成果は豊富にあるようです。以下がその引用です。

課外活動を積極的に行っている子どもたちのほうが、課外活動をあまり行ってい子どもたちよりも、学校の成績がよく、自尊心も高く、問題を起こすことも少ないなど、さまざまな点で優れていることを示す研究は、枚挙にいとまがない。

さらには、複数人のなかからリーダーを選ぶようなときに、課外活動を行っている子から選ばれる率も高いようです。

小学校や中学校などで、真剣にスポーツや音楽などに取り組んでいるような子が生徒会長に選ばれたりするというのも頷けるような気がします。

指名や選挙などでリーダーに選ばれる確率の高さも、「最後までやり通す」の項目において高評価を獲得した生徒たちがずば抜けていた。

ここで一点お伝えしておきたいことは、取り組む課外活動は何でも良いという点です。

どんな内容でも良いので、1年以上課外活動を取り組み、自身の中で何らかの成長をするといった経験がやり抜く力を身につけることに繋がるのだそうです。

ここで注目すべき点は、高校で「どんな活動に打ち込んだか」は問題ではないことだ。・・・。重要なのは、やろうと決めたことを、1年たってもやめずに翌年も続け、そのあいだに何らかの進歩を遂げることなのだ。

野球やサッカーなどのプロスポーツというのは、その結果を日々ニュースでも取り上げられ、日本の子供たちにとっては馴染みの深いものになっています。

そういった意味でも、取り組む課外活動としては適しているのだと私は考えています。

この点については、過去の一度考察したことがあります。よろしければ御覧ください。

感想

本書を読んでからは、「なぜ少年野球をやるのか、やらせたいのか?」という問いに対し、私は「「GRIT やり抜く力」を身につける事ができるからです。」と答えるようにしています。

自分自身も野球とともにあった少年時代を過ごした人間ですので、その経験の大切さは理解していましたが、それを言葉で表すことができないでいました。

ですが、本書を読んだ今、その答えを明確に答えることができます。

感覚を言語化できるるというのは指導者にとって大切な能力の一つです。

この「GRIT やり抜く力」の重要性を言葉として表すことのできるというのは、子供達を支える指導者にとっては持つべきものであると考えています。

そういった活動に携わられている方でまだ本書を読まれていない方は、是非本書を読んでほしいと思います。私ももっと早く読んでおけば良かったと思っている次第です。それくらい素晴らしい内容の本です。

この本との出会いは一生ものだと感じた一冊でした。