サクセストラップ
本記事は、『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン著、以降本書とします。)からの学びをまとめています。
学びが多い書籍であったことから、複数回に分けてまとめていきたいと思います。今回はサクセストラップについてです。
成功体験の裏にあるもの
企業は大きくなればなるほど変化を拒むようになります。
マネージャーは戦略を実行するなかで、どのように調整すれば成功に向けた整合性が高まるのかを学び取ります。学んだ教訓を手順やプロセスに取り入れ、組織構造はより良いものになっていきます。まさに深化による成長がなされていくわけです。
そうした深化の中で成功している組織は、これまでの成功体験をもとに規範を作り、成功に関わる行動について期待値を設定するようになります。その期待値に答えられなければ評価は下がりますので、皆同じような行動を取るようになっていきます。
そのような状況であれば、当然規範に則り定められたプロセスに基づいて仕事をして成果をあげるようになりますので、それを変えるといった発想にはなりません。
本書では以下のように言っています。
成功に向けた構造、システム、プロセス、指標を開発しようと懸命に頑張ってきた人たちは、特に低収益事業に不確実な機会があるからといって、これまでに築き上げてきたものを変えたがらないのだ。
「文化的な惰性」が変化を拒む
上記のような状況になっていくと大きな変化は期待できなくなっていき、市場の変化や新しい技術の到来に対応できなくなっていきます。
これを本書では「文化的な惰性」という言葉を用いており、以下のように言ってます。
これまで自社を成功に導いてきた、まさにその調整力のせいで危険にされされることになった。リーダーが必死に培ってきた構造的、文化的な惰性によって突然、新しいビジネスモデルの実行や適用ができない状況になっているのだ。
成熟企業がこうした状況に陥ってしまうことを「サクセストラップ」と言います。
こうした今までの成功が足枷となり変化についていけなくなるという事例で興味深いのが、コダックと富士フィルムの比較です。
コダックと富士フィルム
コダックも富士フィルムもどちらもカメラメーカーとしては非常に有名な企業です。しかし、片方は市場の変化に適応できず衰退し、もう片方は成功をするという対照的な結果となっています。
カメラ業界ではポラロイド技術により事業を提供してきましたが、デジタル画像処理技術の登場により衰退の一途を辿ります。両社ともに時代の変化を捉えつつ、事業の変革に迫られていました。
衰退市場から抜け出せなかったコダック
コダックはこうした状況において、エレクトロニクス分野で素晴らしい技術をもっていたことがわかっていたようです。しかし、戦略としてフィルムや写真にこだわったがために衰退市場が抜け出せなくなってしまいます。
その背景には、新規事業へ移行するのを妨げる、階層的な文化と完璧な製品設計を強調してきたことがあるようです。
専門知識を応用した富士フィルム
同じカメラ業界に属する富士フィルムも同じ問題に直面しました。しかし、富士フィルムはコダックとは対象的な対応をとります。自社の有する専門技術を他業界へ応用することでその危機を乗り越えました。
その時の富士フィルムCEOの古森さんの考えを引用します。
問題は、そこで何をするかだ。(中略)技術的に言うと、すでに豊富な経営資源があったので、それを新規事業に転換させる方法があるはずだとわれわれは考えた。
結果、今日における富士フィルムはコダックの10倍の規模にまで成長しているそうです。
探索と深化で必要とされる事が違う
本書ではこのようなサクセストラップへの答えとして、以下のように言っています。
探索と深化とでは必要とされることが違うとすれば、サクセストラップの答えは、複数の調整をマネジメントする必要性をマネジャーが認識することだ。
つまりは「両利きの経営をする」ということが大切で、企業と戦略の進化に伴って、調整のやり方も進化させなくてなはらないとしています。本書では組織のKSFを中心にその進化をグラフに表し表現し説明していますが、ここでは割愛します。
企業の進化に合わせて、探索と深化どちらの選択を取るのか、これからのマネジャーにはそれをうまくマネジメントする力が求められるようになっていくようです。