イノベーションの三つの方向性

本記事は、『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タッシュマン著、以降本書とします。)からの学びをまとめています。

学びが多い書籍であったことから、複数回に分けてまとめていきたいと思います。今回はイノベーションの三つの方向性です。

イノベーションの三つの方向性

本書によると、実現可能性(組織能力)と対応する顧客タイプ(市場)で分けると、イノベーションは三つの方向性(領域)で起こる可能性があるとしています。

漸進型イノベーション

一つ目は漸進型イノベーションです。いわゆる改善活動から起こるもので、製品やサービスをより良くすることを目指していくうちに起こります。

一部、本書の表現を引用します。

既存の組織能力を頼りに、既にわかっている道のりを進む。組織内に蓄積された知識に基づいて前進するのだ。

本書でも例にして書かれているもので、ボーイング社の航空機の例があります。航空機はいきなり真新しい技術やサービスで変わるといったことが少ない製品であると言えます。改善を重ね、安全性であったり、速度であったりと言ったものを向上させることで改善されていきます。

不連続型イノベーション

二つ目は不連続型イノベーションです。大きな変化、もしくは、不連続的な変化によって起こるようなイノベーションがそれにあたります。以下、引用を紹介します。

大きな変化、もしくは、不連続的な変化によって起こり、組織能力が無効にな流ような技術進歩を通じて改善が図らえる。この種のイノベーションには、通常異なる知識基盤が必要だ。

・・・、「不連続型イノベーション」では通常、既存企業が持っているものとは異なる組織能力や技能が要求される。そのため、新技術やまだ確実とはいえない技術に投資しなくてはならないことが多い。

一般社会でイノベーションというと、この不連続型イノベーションをイメージすることが多いかもしれません。突然驚くべき製品やサービスが登場して社会構造まで変えてしまうような例がこれに該当します。本書の例では、タイプライターからコンピュータでの文書処理への移行や、新聞社のコンテンツのデジタル配信への移行に関する例が紹介されています。

アーキテクチュアル・イノベーション

三つ目は、アーキテクチュアル・イノベーションです。引用にて内容を紹介します。

一見するとマイナーな改善によって起こり、既存の技術や構成要素を組み合わせることで既存の製品やサービスを大幅に向上させる。アーキテクチュアル・イノベーションは大々的な技術進歩に基づくものではないが、既存の製品やサービスに破壊をもたらすことが多い。これは主にクリステンセンが「破壊的イノベーション」と述べたものと同じだ。

アーキテクチュアル・イノベーションは小さな顧客セグメント向けに安価な代替品を提供するところから始まるとしており、ホンダの事例は印象的でした。

1960年代初期に米国にオートバイを輸出した時の事例が紹介されていますが、別の機会に読んだ野中 郁次郎さんの『ワイズカンパニー: 知識創造から知識実践への新しいモデル』でより詳しい当時の状況が紹介されていることを思い出しました。別で読んだ著書と繋がりを感じるというのは非常に興味深い例でしたので印象に残っています。

両利きになりイノベーションをマネジメントする

この三つのイノベーションはそれぞれ性質が異なり、イノベーションのタイプも異なります。漸進型イノベーションは、深化によって発生しうるイノベーションであり、不連続型イノベーションは探索によって起こります。そしてアーキテクチュアル・イノベーションは企業の組織能力を異なる市場に提供することで生じえます。

本書ではこれらをイノベーションストリームとして市場(縦軸)と組織能力(横軸)の二軸で表した図を用いてわかりやく紹介してくれています。本書の主張としては、これらのイノベーションは、企業が両利きになることでマネジメントすることができ、クリステンセン氏の言うイノベーションのジレンマを解決することができるとしています。

実際、本書においては両利きの経営を行い成功してきた事例が紹介されていますので、本書を通じて、両利きの組織に何が必要かを学ぶことができるでしょう。

ここから先は、より深く両利きの経営について学ぶこととなっていきます。