打撃技術の極意

「高校野球界の監督がここまで明かす!打撃技術の極意」という本を読みました。

大利 実さんという方の一冊で、興味深く読ませて頂きました。今回はその学びをまとめます。

概要紹介

内容はタイトルの通り、著名な高校野球監督の打撃論をインタビュー形式で書いている内容となります。

インタビューを受けている監督は以下の通りです。(所属高校は本書当時の在籍高校となります。)

  • 岡田 龍生監督 (履正社)
  • 狭間 善徳監督 (明石商業)
  • 須江 航監督  (仙台育英)
  • 川崎 絢平監督 (明豊)
  • 紙本 庸由監督 (米子東)
  • 佐相 眞澄監督 (県相模原)

監督へのインタビュー以外にも、

  • 神事 務さん  (データ分析)
  • 三井 康浩さん (元読売ジャイアンツスコアラー)

といった方のインタビューも紹介されており、充実した内容ぶりとなっています。

本書からの学び

私が本書の中で興味を持った箇所を学びとしていくつかご紹介します。

「徹底」するフリーバッティング

履正社 岡田監督へのインタビューの中で、星稜のエース、奥川投手との対戦を意識した練習において、定めたキーワードが、この「徹底」という言葉でした。

キーワードに挙がったのが「徹底」だ。

「フリーバッティングを打つ際、ただ打つのではなく、何かひとつのテーマを決めて練習する。

たとえば、外野フライを打つ練習をしているとか、センター中心に低いライナーを打っているとか、何をするかは人それぞれでいい。監督やコーチが外から見たときに、『あの選手はこの意識で取り組んでいる』とわかるぐらいまで、徹底する。

フリーバッティングをしている選手の狙いが監督・コーチにまで分かるようなレベルでの「徹底」したフリーバッティングというのは、一見出来そうに見えてもなかなか出来ることでは無いと思います。

まず自主性のもと選手自らの考えがあった上でないと、適切な狙いの設定ができません。その上で、他者にわかるようにまでその狙いが体現されるまで練習する、というのは並大抵の努力ではできなのだろうと感じました。

自分が高校自体にここまでできていたか考えても答えは「No」であったと思います。

このインタビューでの学びは、高校生の段階でここまで高いレベルで練習をしているんだということが、私の中で驚きを与えてくれました。

『バントは二度やる』

私の指導している少年野球の子供たちもバントを苦手とする子供は多いです。

基本的な構えや体の使い方は教えることはできているつもりですが、心の中の意識にまで踏み込んだ指導はできていないことに本書を読んで気づきました。

そのポイントとなるのが、明石商業 狭間監督のインタビューにある、『バントは二度やる』という意識でした。

バントの構えをしたあとに、ピッチャーのリリースに合わせて、腕をリリースポイントまで伸ばし、心の中でバントする。そのあと、ホームベースの上でもう一度バントする。

腕を伸ばしてバントをすれば、リリースポイントからホームベースまでの時間を長く感じ、ボールがくるのを遅く感じられるようになる。だから、リリースのときには構えを終えていなければいけない

これまで一度としてバントを二度やるという考えをしたことがなかったことから、この学びは私の中でとても驚きを与えてくれた学びでした。

「ピッチャーのリリースに合わせて一度心の中でバントして、ホームベースの上でもう一度バントする」

という意識は少年野球の子供達にもできそうだと思いました。バントをする子供達の心理状態としては、「失敗したらどうしよう」という思いが強くなりすぎて、失敗してしまうということがよくあります。

そういった不安も二度バントをするという意識があれば、薄れてくれるのではないかと思います。今度のバント練習時には、この意識は私の中でも持つようにして指導にあたるつもりです。

中学時代に体の強さを養う

中学での野球をどうしようか悩んでいる、今の我が家に丁度タイムリーな内容に触れているインタビューがありました。仙台育英 須江監督の言葉でした。

中学時代に体の強さを養うことは絶対に取り組んでほしい。

相対的に見ると、硬式からきた選手のほうが体が強い。日ごろから軟式よりも重たいバット、重たいボールを打っていることも関係していると思います」

中学硬式野球の知識は素人同然ですが、最近知ったことが、硬式バットの一番軽い重さが790gくらいからだということでした。

小学生の扱うバットは6年生で590g程度ですし、中学や軟式一般のバットの主流は700~800gくらいであることを考えるとかなり重いです。

つまり中学で硬式をやるということは、そのバットを日常的に扱える体の強さを養う必要があるということになります。日頃から軟式よりも負荷の強い道具たちに触れて練習することで自然と身体が強くなっていくでしょうし、その準備をしてきた中学生の強さは本物なのだろうと感じた次第です。

今丁度、長男の中学での野球をどうするか悩んでいる時期ですので、こうした情報も参考にしていきたいと思います。

感想

「なるほど、こういった考え方で指導にあたっているのか。」と読みながら頷くことの多い、学びある一冊でした。

甲子園という舞台を本気で目指すチームの監督さんの言葉は重みが違います。そして、その中で語られる打撃理論は、現場と理論を知り尽くした上での言葉であると感じました。

もう一つ感じたこととしてあげたいのは、各監督それぞれに芯が通った考え方を持ちつつも、現場の子供達に合わせた指導をされているという点です。

身体を動かして学んでいった方が成長が見込める子供達には、より感覚的な指導が中心であり、頭で考えてから身体を動かしたほうが成長が見込める子供達には、理論や思考法から入る方が良い、ということを自然と実践されているのだろうと読んでいて感じました。

米子東 紙本監督は『マズローの五段階欲求』の考え方を野球指導に取り入れていますが、高校野球をしている時にそんな事を考えたこともなかったですし、それを理解し行動できる子供達もすごいと思います

教えたい芯となる指導感があり、その上で工夫された指導方法がある。本書を読んだ総括として感じた点でした。