「やり抜く力」は習得できる
※本記事は、アンジェラ・ダックワース著『GRIT やり抜く力』からの学びをまとめています。
「GRIT やり抜く力」では、成熟した「やり抜く力」の鉄人たちには共通点があるということを述べています。
これまで四回の記事において、そのひとつずつまとめてきました。
今回はそのまとめとして、「やり抜く力」を考えるにあたり大切なことを書いていきます。
4つの特徴は全て習得できる
4つの特徴における最後のまとめとして伝えたいこと、各特徴ひとつひとつが習得できるものであるということです。
本書においてもそれをまとめとして伝えおり、大切なメッセージだと捉えています。その引用を以下に紹介します。
「興味」「練習」「目的」「希望」という4つの特徴は、もともと「あるかないか」という性質のものではない。
興味対象は自分で見つけさらに興味を深めることができる。鍛錬の習慣も、自分で身につけることができる。目的意識を養い、深い意義を感じることができる。そして希望を持つことも、やはり学ぶことができる。
それぞれの特徴は一見すると、その人があらかじめ才能として持っているのではないかと捉えてしまうような要素です。しかし、その考え方は誤りであり、どれをとっても後から習得することができます。
考察するために、それぞれ一つずつ掘り下げてみたいと思います。
掘り下げるほど「興味」は持てる
面白いもので、「興味」というのは掘り下げれば掘り下げるほど、「興味」を持つようになっていきます。
反対に言えば、どんな人でも最初は軽い気持ちのレベルの興味しかもっていないということでもあります。
本書の例において、オリンピックのメダリストのインタビューがあるのですが、その内容を取ってみても、始めはそれほどの「興味」ではないことがわかります。
実際に(金メダリストへの)インタビューで話を聞いてみると、ほとんどの人は「これだ」と思うものが見つかるまでに何年もかかっており、そのあいだ、さまざまなことに興味を持って挑戦してきたことがわかった。・・・、最初から「これが自分の天職だ」と悟っていたわけではなかったのだ。
高いレベルで活躍されている人でも、自分の中で「これだ」と思う感覚を掴むまでには時間を要します。
「興味」を持つ対象に触れる時間が増えれば増えるだけ、「興味」を持つことになるでしょう。そして時には最終的に「興味」を深める対象から離れてみてもいいかも知れません。
野球が大好きな人は、実際に野球をやっていない時にも野球ゲームで遊んでいたり、野球漫画を読んでいるなんていうことはよくある例です。
そしてたまに違うスポーツをやってみると、「やっぱり野球が好きだな」と思うようになります。
こうしたことの繰り返しが「興味」を深める行動に繋がっていきます。
他の特徴が「練習」の継続を支える
ずっと「練習」をできる人というのは、その人が特別我慢強いから練習を続けられるというわけではありません。
他の3つの要素に繋がっていると「練習」は続けられるようになる、と私は考えています。
「興味」を持っていると、もっと関わりたいと思って、「練習」に励むようになります。
「目的」が定まればそれを達成するために、辛い「練習」も乗り越えられるようになります。
「希望」を持っていれば、困難に立ち向かうために「練習」の必要性を理解することでしょう。
このように「練習」は他の特徴と相互に関係しあうことで、「練習」取り組むことができ気がつけば「やり抜く力」の一つの特徴となるくらいまで続ける事ができるようになっていくのだと思います。
「目的」意識を養うという考え方
とりわけ「やり抜く力」が高い人達は、目的意識も高いことがわかっています。彼らは高いレベルに設定したゴールを目指し、努力を継続することができます。
「やり抜く力」の強い人々は、ふつうの人にくらべて、「意義のある生き方」「ほかの人々に役に立つ生き方」をしたい、というモチベーションが著しく高い。
さらには「目的」のスコアが高いほど、「やり抜く力」のスコアも高いことがわかった
私の仮説ですが、「やり抜く力」が強い人というのは目指したい「目的」がはっきりしているように思えます。さらには、目指したい「目的」は考え続けることで洗練されていくのだと思います。企業でいえば「ビジョンを明確化する」といったことに近いでしょう。
例が貧弱かも知れませんが、最初は漠然と「オリンピックのメダリストになる」というゴールであったものが、「未来のメダリストのために模範となれるようなメダリストになる」になっていったり、「誰も成し得ない技を披露できるメダリストになる」へ進化するかもしれません。
大切なのは「目的」を明確化する力を養うことが、「やり抜く力」を高めることにも通じるということです。
「希望」と「成長思考」
どんな人でも辛い状況や困難に直面することは必ずあることでしょう。そんな時に「希望」を持ち続けるということは、「やり抜く」ために必要な要素になってきます。
困難な状況において、自分の中の「希望」が負けてしまうようでは継続はできません。それだけ強い「希望」を持ち続ける必要があります。
そして「希望」を持ち続けるという考え方は、成長思考に繋がっていくようになります。まさに「諦めない」ための考え方です。本書でも成長思考について紹介があります。
私は「成長思考」について、つぎのように考えている。
人間は変われる、成長できる、と信じている人たちは、チャンスと周囲のサポートに恵まれ、「やればできる」と信じて一生懸命努力すれば、自分の能力をもっと伸ばすことは可能だと考える。
引用から感じ取れることは、「成長思考」が強い人は物事を比較的楽観的に考えることができる人です。
「やり抜く力」の鉄人には、こうした楽観的に考える人が多く、一度や二度失敗してもすぐに切り替えて、また新しいステップを歩むことができます。
繰り返しになりますが、これは先天的なものではありません。鉄人も何度も逆境を経験し這い上がってきた経験があるからこそ、成長思考が高まっていきます。
以下にもう一節引用します。
「成長思考」でいると、逆境を楽観的に受け止められるようになり、そのおかげで粘り強くなれる。新しいしれんが訪れても臆せずに立ち向かうため、さらなる強さが培われる。
「希望」を持ち続けることで「成長思考」が高まります。 そしてその「成長思考」が、その人を困難な状況に何度も立ち向かわせ、逆境を乗り越えられる強さを与えてくれます。
まさに諦めないことが未来への近道です。
少年時代に「やり抜く力」の習得を
「やり抜く力」とは後から習得できるもので、更には少年少女の時代から養うことのできる力です。
「やり抜く力」とはどんな年代層からでも培うことはできますが、積み重ねた苦労や経験こそが「やり抜く力」を育むため、幼い頃から課外活動などに参加をして鍛えることが重要です。
野球やサッカーなどのスポーツでも良いですし、バレエや音楽、演劇なども良いかも知れません。
一朝一夕では成し得ない、熟練するまである程度の期間を要するような活動を継続することで、自然と身についていきます。そういった経験を小さいうちからしている子は、社会に出ても強い精神と志を持って羽ばたけることでしょう。
私が、長男・次男に野球を続けてほしいと願うのも、こうした「やり抜く力」を身につけて欲しいからだと考えています。本書を読むまでは漠然とした思いでしたが、この本に出会い、明確にそうであると今は自身を持って言うことができます。
「やり抜く力」を身に着けたい一人の社会人として、そして「やり抜く力」を身に着けてもらいたい子を持つ親としても、大きな学びのある内容でした。
子供たちが野球を通じて「やり抜く力」を鍛えている以上、私も負けていられません。記事執筆も含め、自己成長のために良いと思ったことは継続していく次第です。