リーダーシップを発揮するための基本動作
伊賀泰代さん著の「採用基準」という本を読みました。
この本との出会いは、入山章栄さん著の「世界標準の経営理論」という本を読んでいる中で、本書の紹介があり、興味を持ったことがきっかけで本書との出会いを迎えることができました。
本書では主にリーダーシップの重要性を説いていて、非常に学びのある本であったことから、その中からの学びを複数回に分けてまとめていきます。
- 採用基準
- リーダーシップを学ぶ
- リーダーがなすべき4つのタスク
- リーダーシップを発揮するための基本動作
- 問題解決とリーダーシップ
今回は本書の中で紹介があり、学びのあった事柄の一つである、「リーダーシップを発揮するための基本動作」についてまとめていきます。
6つの基本動作
本書ではリーダーシップを発揮するための基本動作として、6つの基本動作を推奨しています。
- バリューを出す
- ポジションを取る
- 自分の仕事のリーダーは自分
- ホワイトボードの前に立つ
- できるようになる前にやる
- 自分のリーダーシップ・スタイルを見つける
どれも、伝えていることはシンプルですが、自信を持って出来ていると言える方は少ないのではないでしょうか。私も一部しかできていないと思います。
今後、今より一つでも多く、これらの基本動作が行えるようになるためにも、その一つ一つを自分の言葉に落とし込んでいきたいと思います。
バリューを出す
本書では、この1つ目の基本動作をが出来ていることを、他者からフィードバックをもらうことを推奨しています。
「私はちゃんとバリューが出せましたか?」
この質問を、都度打ち合わせの後や、成果物のレビューの後などに、参加して頂いた相手へ伺うことが、自分のリーダーシップを高める動作であるとのことです。
この問いの答えを求め事を続けるうちに、自分が行った行動に対し提供した価値を意識するようになっていきます。
特に、会議においてしっかりと発言をするという重要性を、本書では述べてくださっています。
少し長いですが、私が特に響いた部分なので引用させて頂きます。
「会議で発言ゼロの人はバリューゼロ」というのも同じです。どんな会議であれ、話を聞くだけでひとことも話さなければ、その人が会議にいてもいなくても、会議の結論、すなわち成果物は一切変わりません。
つまり、その人の出した付加価値はゼロということになります。たとえ稚拙であっても何かを発言すれば、ほかの人の思考を整理したり刺激したりする可能性もあり、会議の成果物が変わるかもしれませんが、発言ゼロでは価値が出る可能性は完全にゼロです。
少し強めの表現ではありますが、とても大事なことを伝えてくださっています。
自分の貴重な時間を割いて会議に参加しているのにも関わらず、一切発言をせず会議が終了してしまえば、一切バリューを提供していないことになります。
何かの検討事項の当事者であるからその場にいるのですから、最低一つは発言をして、会議を終えるべきであるということを教えてくれています。
ポジションを取る
2つ目の「ポジションを取る」というのは、言い換えれば「自分が意思決定者だとしたら、同決断するのか」を考えるということだと理解しています。
さらには、意思決定時の他者への説明の仕方についても踏み込んでおり、以下のように述べられています。
「まずは自分の意見を言え、分析の結果や理由はその後に述べよ」ということです。
これが日本人にはなかなか難しく、どうしても理由や根拠から話してしまう癖が抜けない方が多いようです。
これは日本の文法が、「私は、△△だから、☓☓だと考えます。」という順序になっていることにも起因しますが、結論を後回しにしてしまうことが起きがちです。
ビジネスシーンにおいては、結論を先に伝えることが求められるため、
「私は☓☓だと考えます。その理由は△△だからです。」
と話す癖をつける必要があります。
まずは話し方や思考の順序を変えるところから始める必要がありそうです。
本書では、
常に結論にフォーカスする癖をつけることで、検討に必要な時間は大幅に短縮できます。それは最終的に経営の意思決定のスピードを左右することになるのです。
とも言っており、常に結論から伝えることで、最終的には意思決定のスピードにも響くのだと教えてくれています。
また、常日頃からこの「ポジションを取る」ような振る舞いを意識することで、リーダがなすべきタスクの1つである、『決める』ことに対する訓練にもなります。
もし私が意思決定者だったらどんな判断をするか?
こういったことを考える習慣を持つことが、リーダーとして活躍するための近道なのかもしれません。
自分の仕事のリーダーは自分
次は「自分の仕事のリーダーは自分」という基本動作です。
この基本動作を理解する上で、最も印象的だったのが、「放射状の組織図」という考え方です。
「自分の仕事に関しては自分がリーダーであり、パートナーやマネジャーを含めた関係者をどう使って成果を最大化するのか、それを考えるのがあなたの仕事だ」という意味です。
上記の引用にもある通り、仕事の成果を最大化するために、自分が中心となって、上司や部下、その他関係者の協力を得る必要があります。
以下がそのイメージ図となります。
通常の組織図においては、階層型の組織図になるのが普通ですが、行動面における組織図では上記のように自分が中心となり、その周囲に上司や部下がいるという意識で行動することが重要となります。
この意識を持つことはとても重要で、リーダシップを発揮するために常に意識をしておきたい視点だと感じました。
ホワイトボードの前に立つ
4つめは「ホワイトボードの前に立つ」ということです。
以下の引用がこの基本動作の重要性がわかるかと思います。
ホワイトボードの前に立って議論のリーダーシップをとるには、会議の参加者が発する意見を全体像の中で捉え、論点を整理して議論のポイントを明確にしたり、膠着した議論を前に進めるために視点を転換したりと、さまざまなスキルが求められます。
上記の通り、自分が先頭に立って議論をすすめることで様々なスキルを高めることが出来ます。
加えて、自分が議論を理解できていない時に、その知識不足を周囲の方にもさらけだすことになります。
これはとても勇気がいることですが、自分が先頭に立って理解できていないことを口にすることで、他の人の理解不足の解消させることができます。
そういった意味においても、このホワイトボードの前に立つという振る舞いは積極的に行っていったほうが良いと再確認をしました。
できるようになる前にやる
5つ目の「できるようになる前にやる」という基本動作です。これは非常に重要だと私も思います。
ビジネスシーンにおいて、やるべきことがわかっている仕事というのはあまり多くはありません。
やるべきことが明確にならないから行動しないのでは、先に進みませんしリーダーシップを発揮しているとは言えません。
以下に私の胸に響いた一節を紹介します。
多くの場合、とりあえずやってみて、本当にできない部分だけを誰かに助けてもらうという実践的な方法で鍛えられます。
「できるようになったら、リーダシップを発揮する」のではなく、「リーダーシップは今すぐ発揮してください。できない部分については、次回からどう改善すればいいかを学びましょう」
というやり方なのです。
リーダーシップを持った人の行動のスタイルとして、まずやってみるという考え方は重要なように思えます。
リーダーシップ的な観点以外にもVUCA時代の変化が激しい昨今においては、念頭な準備をしているだけの時間もありません。
状況が刻一刻と変わっていく中において、すぐに行動するという姿勢を身につけることはビジネスマンとして必要な素養なのでしょう。
トライして、何故失敗をしたのかを考え、また次のことにトライする
この姿勢を貫くことがリーダーシップの基本動作に通じるものであると理解しました。
自分のリーダーシップ・スタイルを見つける
自分のリーダーシップ・スタイルとはどういったものなのでしょうか。
私の知る限り、学術的にはトランザクショナルリーダーシップ、トランスフォーメーショナル・リーダーシップ、シェアードリーダシップなどがあるようです。
ですが、ここで伝えたい基本動作とは、「自分がどんなリーダーになりたいのか」といった問いに対し、答えを見つける努力を続けるということをだと私は考えています。
自分は、どのような分野において、どんなスタイルで組織を率いていくリーダを目指すのか、なりたいのか、といったことが、本人も交えて頻繁に話し合われるのです。
上記にあるように、著者の勤務されていたマッキンゼー社においては、頻繁に自分のリーダーシップ像について、話し合われる機会が多数あるようです。
こういった議論を頻繁に行い、答えを探すきっかけ作りを促すのは、とても素晴らしいことだと考えます。
自分だけで考えることも大事ですが、他者の意見も交えて考えることで、自分なりのリーダーシップというのは生まれるのだと思います。私も見習うべき基本動作だと感じました。
どれか1つでも実践する
以上が、6つの基本動作です。
言葉で表すと、一つ一つはとてもシンプルなワードに収まりますが、これを基本の動作として当たり前にこなす人は決して多くはないと私は考えています。
私も一部は出来ていて、一部は出来ていないという状態です。
そういった中でも、重要なのはできるようになる前にやることなのだと思います。
失敗や内省を繰り返す中で、自分のリーダーシップ・スタイルを見つけることができるようになるはずです。
まず意識して行動しなければ(探すことを始めなければ)、見つけることはできません。
私も自分のリーダーシップ・スタイルを確立するためにも、この6つの基本動作を意識した行動を貫くつもりです。