小倉ノート

今回読了した一冊は高校野球の指導者を長年されたきた方が記した一冊です。本書からの学びをまとめていきます。

本書を読もうとしたきっかけ

一時期、高校野球の強豪校での指導なさっている方がどのような想いや考えで野球に取り組んでいるのかを知りたいという時期があり手に取った一冊です。

著者について

小倉清一郎(おぐらきよいちろう)さんという方が書かれている本となります。

横浜高校から東京農業大の進み、社会人野球では三菱自動車川崎、河合楽器プレーなさっています。選手引退後は、東海大一高、横浜商高、横浜高校のコーチ、監督、部長を歴任されています。

読書からの学びや気づき

内容的には、ご本人の自伝的内容や、その経験に基づく野球論を展開されています。読む人によって、響く箇所は異なるかと思いますが、私なりの学びをまとめます。

  • スカウトする側が見る良い選手とは
    • バッターは「強肩」、「俊足」、「振る力」
      • 強肩:中学3年生で「遠投90メートル」
      • 俊足:「50メートル6秒フラット」
      • 振る力:880グラムぐらいのバットを振れるように
    • 守備は股関節が柔らかいか、股が割れるか
    • ピッチャーは「130キロ」か「決め球となる変化球」が判断基準
      • 横浜港だと、松坂が133~134キロ、成瀬善久(ヤクルト)が130キロ、涌井(ロッテ)が133キロ
  • 実力互角なら上級生を使うのか?
    • 昔は翌年のチーム編成を考え、上級生を飛ばして下級生を使っているチームがあった
    • 最近は、下級生は「自分の代で甲子園に行きなさい」という風潮にある
  • 伸びていくのは「自分に負けない」選手
    • 実力がありながらプロ入りできずに野球を辞めていった理由は、ほとんどが自分に負けていた
      • 「今日はスイングやりたくない」「今日は走りたくない」。そこで自分に勝った選手こそが生き残っていった
    • 中学生なら高校野球、高校生なら大学野球やプロ野球を1試合最後まで見られる子は伸びていく
  • バッテリーの育成について
    • ピッチャー
      • 素質のあるピッチャーの球速は、順調なら1年間に5キロ伸びる
      • コントロールは鍛えれば良くなる
        • 「コントロールが良い」とは単にストライクを投げることではなく、「思ったところに投げ分ける」こと
      • 「ツーシーム」か「動く球」を覚える
        • 150キロのストレートばかりなら目が慣れて、そのうち打てるようになる
      • ストレートを含む全ての球に緩急が必要
        • ピッチャー本人がキャッチボールのときから、握りを変えたり、指のかけ方を変えたり、力の入れ方を変えたり、試行錯誤して自分のものにしていく
      • 一番打たれるのは10キロ減の変化球
    • キャッチャー
      • 「正解のない正解」を求めるのがリード
        • キャッチャーのリードの基本は対角線。「インコース高め」と「アウトコース低め」をうまく使うこと
      • 今の時代は中学時代からキャッチャーという選手が高校でもキャッチャーになるケースが多い
      • キャッチャーが野手のポジショニングを決める。ピッチャーの球種で動かすのではなく、バッターの打球方向、特性で動かしていく
      • キャッチャーは「第二の監督」、キャッチャーが責任を持って野手を動かしていく。そうできるように仕込んでいくのが指導者の仕事

本書を読み終えて

著者の方の野球に関する情報収集能力は圧倒的で、私の遥か先にいっているという印象でした。そのため、今の私にとっては追いつききれない情報も多くあったという印象です。

本書の読み方として、「小倉さんの自伝として読む」、「野球の戦略とはどう考えるかを学ぶ」、「名門と呼ばれる高校に属する球児がどう成長していったのかを理解する」という感じで複数の目線から読むことができます。私は一番最後の感覚で読んでいたことから、将来名門に入るような高校球児を目指すにあたっての指標のようなものを与えてくれた感覚があり、それを学ぶことができただけでも価値があったように思えます。

野球を学ぶという意味では非常にレベルの高い内容が書かれていますので、高校野球や大学の指導者の皆様にとっては特にためになる一冊かもしれません。