最高のコーチは教えない
今回はプロ野球でも活躍された吉井元投手(今は千葉ロッテマリーンズの投手コーチ)のコーチングに関する書籍を読んだ学びについてまとめます。
本書を読もうとしたきっかけ
業務的にも育成対象がいる立場になり、これまでよりももっとコーチングを学びたいと思うようになり手に取った一冊です。
その一方で私も野球経験者ということもあり、メジャーリーグでも活躍された吉井投手がコーチの立場となり、何を考えどう選手を育ててきたのかという視点でも興味があり読み進める事にしました。
著者について
著者は吉井理人さんです。
元プロ野球投手でもあり、メジャーリーグでも活躍された方で、現役終了後はコーチとしてもご活躍されている方です。
最近では千葉ロッテマリーンズで佐々木朗希投手の育成を担当されている事でも注目を集めています。
読書からの学びや気づき
ここからは本からの学びを書いていきます。
はじめに
- いきなり教える側に立つことはできない
- 自分の事しか考えてこなかった人間が、何の準備もなく教える側に立っても、自分の経験を伝える事しかできない
- コーチの仕事は「教える」事ではなく、「考えさせる」こと
- コーチの仕事は、選手が自分で考え、課題を設定し、自分自身で能力を高められるように導くこと
- 「指導者=教える人」という常識を覆さないと、メンバーの能力を最大限に発揮させることはできない
なぜ、コーチが「教えて」はいけないのか
- 相手と自分の経験・常識・感覚がまったく違う
- 強制的な指導は目的を見失う
- 納得できないまま強制されたら、目的を見失ってトレーニングの効果も薄れてしまう
- 強制的な指導は目的を見失う
- 相手を信頼し、やる気を出させる言葉を使う
- コーチングの基本は選手に主体があること
- コーチが強い言葉を使いすぎると、上下関係が余計に強調され、味方であるはずのコーチが、選手にプレッシャーをかけることになってしまう
- コーチングの基本は選手に主体があること
- アドバイスは邪魔なものだと肝に銘じる
- 日本のトップ選手が集まるプロ野球界でも、他人の言葉を自分の感覚に変換して完璧に再現できる選手はほとんどいない
- コーチのアドバイスは、選手にとっては邪魔なもの。コートは自分の経験に基づいた言葉だけでアドバイスするのは避けるべき
- コーチが「自分ができるから選手もできる」考えるのは誤っている
- 叱るべきタイミングとは、「手を抜いたとき」だけ
- 「選手のミスは絶対に叱っちゃいかん。本気をださんとき、手ぇ抜いたとき、そんときだけ怒れ」
- 「選手のミスは絶対に叱っちゃいかん。本気をださんとき、手ぇ抜いたとき、そんときだけ怒れ」
コーチングの基本理論
- 個々人が才能を発揮したとき、チームは強くなる
- こーちとしては、個人とチームがうまくまとまるように指導していかなければならない。ビジネスパーソンもプロフェッショナル。組織として求める能力よりも、個人が持つ能力を上げることを優先させたほうが良い
- 「指導行動」と「育成行動」
- 指導行動:選手個人のパフォーマンスをあげるための行動
- 端的に言えば技術的なスキルを教えること
- 完全に一人ひとりに対してオーダーメイドで対応していくのが、指導行動の本質
- 端的に言えば技術的なスキルを教えること
- 育成行動:選手のモチベーションや練習の取り組み方、設定課題の質を向上させるための行動
- 技術ではなく心理的、あるいは社会的な面において個人の成長を促す行動
- 簡単で小さな課題を設定し、小さな成功を継続的に積み上げていく
- 課題設定⇒振り返り⇒新しい課題の設定というサイクルが習慣になるまで徹底的に繰り返す
- 選手が自分でコントロールすることが可能で、失敗してもやり直しがきくような課題を設定し、モチベーションを高めるような指導をするのが、コーチが行う育成行動の本当の役割
- 指導行動:選手個人のパフォーマンスをあげるための行動
- 成長を促す「課題の見つけ方」を指導する
- コーチは選手が難易度の高い課題(=夢)に挑戦する前に、クリアしなければならない課題があることを根気強く説得し、理解させ、納得させなければならない
- 課題を自己設定する習慣を身につけさせる
- 中学校や高校の部活動の頃から、自分で自分の課題を見つけて実行する習慣を身につけていれば、大人になってからの成長スピードも早い
- うまく課題設定ができる人は、自分の特徴を知った上で、自分にあった小さな課題から始めている
- コーチは絶対に「答え」を言ってはいけない
- コーチは、選手に自分の言葉で語らせることに、徹底して意識的にならなければならない
- 好奇心が向上心を生み、課題を設定させる
- 好奇心があるから、向上心も出てくる。行動の源には好奇心があると言い切っていいと思う。なぜ?と問い続けていると、課題は自然に出てくるもの
- 好奇心があるから、向上心も出てくる。行動の源には好奇心があると言い切っていいと思う。なぜ?と問い続けていると、課題は自然に出てくるもの
スポーツコーチング型PMモデル
- コーチングは指導行動と育成行動の2つを指導していくこと。その使い分けの基準となるモデルが「スポーツコーチング型PMモデル」
- こちらは非常に学びが多かったことから、別記事にて内容をまとめています。ご興味があれば こちらを御覧ください。
「観察」「質問」「代行」
- はじめに「観察」、次に「質問」、最後に選手の立場に立って「代行」する
- 指導する選手にはどのような方法が合うか、どう伝えればいいか、その選手になりきって考える
- 答えを教えても相手を惑わせるだけ。その選手にとって合っているかどうかはわからない
- 同じ仕事をしているのに、成長している人としない人がいる。そういう問題も観察で見極め、コーチが対策を打たなければ、本人にとっては効果がない
- 自分のプレーを言葉で表現できるようにならないと、そのパフォーマンスが自分の身についたことにはならない
- 「質問」の狙いは「自己客観視」と「信頼関係の基礎」
- 自分を客観視できれば、自分のいいところと悪い所がしっかりと見える
- 選手は言語化した内容をコーチに肯定してほしい
- 肯定され続けていると、選手はコーチを信頼し指示を聞く準備が出来てくる
- 相手に選択権を与え、主体性を尊重する
- 自分のやりたい指導を選択肢の中に含め、選択権は選手に与える
- 「代行」によって、相手の立場に憑依する
- 旧来のコーチにありがちな「自分だったらこうする」と考えるのではなく、視点を変えて「その選手だったらどうするか」と考えていくこと
- 急激な軌道修正よりも、着実な成長を促す
- スピードを求めすぎると途中で伸び悩みゴールに到達しない。反対に急激な軌道修正をしなければ、歩みは遅いかもしれないが止まることはない
成長のために、自ら課題を設定させる
- 自ら課題を言語化し、常に忘れないように意識するため書いておくことが重要
- 「目的」、「目標」、「課題」を設定できないと、プロフェッショナルとして成功できない
仮定の議題について議論し、思考力を鍛える
- 「わかったようでわからない」テーマについて考えさせ、それを言語化させ、みんなで議論することが思考を広げる手段になる
一つのスキルを指導するために無数の指導方法をしていなければならない
- サッカーのコーチは、自分が教えたことを選手が出来なければ、選手の責任ではなくコーチの責任であると考える
- 一つのほうほうでできるようにならなければ、別の方法で指導しなければならない
- 選手のタイプは無限。その組み合わせを考えると、指導方法の引き出しを増やす努力を怠ることはコーチとしての存在意義を放棄することになる
- コーチが学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない
本書を読み終えて
とても勉強になった一冊でした。野球界だけでなく一般的なビジネスの世界においても十分適用できる考え方が豊富に詰まっていますので、ビジネス書として捉えてもまったく問題無いと感じました。
本書を読んで学んだ二点、(1)実指導時に具体的な答えを教えすぎないことと、(2)「指導行動」と「育成行動」という二軸で育成対象者のステージを捉えること、は今の私の育成感の基本としています。
(1)についてはバランスが重要だとも考えており、育成対象者に教えなさすぎる(指導行動の程度が低すぎる)と育成対象者が目標達成に辿り着けないこともあることから、このあたりは経験を積み、各対象者あった指導行動の目安を見つけていきたいと考えています。
本書での学びを少野球指導、ビジネスの現場においてもどんどん活かしていきたいと思います。良い一冊に出会えました。