1兆ドルコーチ
ここ数ヶ月、本屋さんの一押し棚に無いことを見たことがない本作を読了しました。本日はこの一兆ドルコーチからの学びを綴っていきたいと思います。
年齢的にも30代中盤となり一人のプレーヤーからチームを支えるべき人材にならなければならない年代に差し掛かりました。
育成対象の若手も多くなってきた状況の中で、
『どのように接すれば育成対象の社員に響き、より成長を促すことができるのか』
という問いは、今の私にとって目を向けるべき重要な課題となっています。その答えに向けたヒントをもらいたいと思ったことが本書を読みすすめるきっかけです。
著者について
本書はエリック・シュミットさん、ジョナサン・ローゼンバーグさん、アラン・イーグルさんの共著で、過去に『How Google Works 私達の働き方とマネジメント』という本を執筆しています。
三名の皆さんともグーグル上級メンバーであり、エリック氏は会長兼CEOも努めています。
読書からの学びや気づき
ここからは本書からの学びや気づきを書いていきます。様々な学びを得ましたが、ここではさらに絞った一部をご紹介致します。
シリコンバレー最大の伝説
- なぜ誰もがビル・キャンベルの話をするのか?
- 選手がフィールドだけでなく、人生で成功できるように手を貸すのが自分の務めだと心得ていた。勝利することよりも彼らが豊かな人生を送ることのほうが、彼にとっては大事だった
- 「最先端の研究」のはるか先を行く考え方
- すぐれたマネージャーでいるためには、すぐれたコーチでいる必要がある
- 人は高みに上れば上るほど、自分が成功するために他人を成功させることがますます必要になる
- すぐれたマネージャーでいるためには、すぐれたコーチでいる必要がある
- 組織のカギは個人ではなくチーム基本の要素として捉えるべき
- 最高のチームであるための「5つのカギ」
- 心理的安全性:心理的安全性が高い(マネージャーの後ろ盾のもとで、安心してリスクを取れると感じているか)
- 明瞭さ :明確な目標を持つ
- 意味 :仕事に意義を感じる
- 信頼関係 :お互いを信頼する
- 影響力 :チームの使命が社会に良い影響を与えると信じる
- 最高のチームであるための「5つのカギ」
ビルが大事にしてきた原則
- オペレーショナル・エクセレンス(現場の業務遂行力の卓越性)
- そもそもなぜマネージャーが必要なのか
- 企業はイノベーションの実装段階にあるとき資源を有効に配分し対立を解消するためにマネージャーを必要とする
- リーダーは部下が作る
- 「独裁的な管理スタイルはうまくいかない」
- マネージャーの権威は「部下や同僚、上司と信頼を築くことによってこそ生まれる」
- 「君がすぐれたマネージャーなら、部下が君をリーダーにしてくれる。リーダーを作るのは君じゃない。部下なのだ。」
- とても良い言葉だと感じた一文です。周囲がリーダーとして認めてくれるような人材にならなければならないということを教えてくれる一文です。
- 「君がすぐれたマネージャーなら、部下が君をリーダーにしてくれる。リーダーを作るのは君じゃない。部下なのだ。」
- そもそもなぜマネージャーが必要なのか
- ピープルファースト(人がすべて)
- マネージャーは「支援」、「敬意」、「信頼」を通じてその環境を生み出すべき
- あらゆるマネージャーの最優先課題は、部下のしあわせと成功だ
- 部下を持つ立場にある人は、この意識を常に持って行動をしなければならないと感じました。何が部下にとっての幸せか、何が成功かを考え行動するかどうかで、部下の成長も変わってくるだろうと考えます。
- 決断力
- コンセンサスなんかクソくらえ!
- 最適解を得るには、すべての意見とアイディアを俎上に載せ、グループ全体で話し合うのが一番
- 「チームと問題を話し合うとき、君はいつも最後に話すようにしろ。・・・・正しい答えにたどりつくのは大事だが、チームみんなでそこにたどりつくプロセスも同じくらい大事だ。」
- マネージャーが答えや方向性を独裁的に決定し行動させるのは簡単です。ですがそれでは部下は成長しない。チームのみんなが答えに辿り着くプロセスに着目することも重要な育成方法なのだと学びました。
- マネージャーの仕事は議論に決着をつけることと、部下をよりよい人間にすること
- チームみんなで考えるプロセスを行った上で、最終的な議論に決着をつける。議論を引き伸ばし続けるもの良くないですから、このあたりのバランス感覚は非常に重要ですね。
- 「第一原理」で人を導く
- その状況における「第一原理」、すなわち会社やプロダクトを支えている普遍の真理を明らかにし、その原理をもとに決定をくだせ
- コンセンサスなんかクソくらえ!
- すぐれたコミュニケーション
- コミュニケーションが会社の命運を握る
- 何かをはっきり伝えたとしても、十分理解されるまでには何度か繰り返す必要がある
- 「お祈りを何度繰り返してもご利益はへらない」
- この言葉はとても印象的でした。私も同じことを何度も説明したりすると、「また説明するのか・・・。」と心を濁す事があります。そんなときにはこの言葉を思い出すようにしています。
- 「君のトップ5はなんだ」
- 自分の時間と労力をどう優先づけしているのかを知るための質問
- コミュニケーションが会社の命運を握る
- 最も厄介な人材から最大限の力を引き出す
- 「ディーバ(傲慢なスター)」をうまく扱う
- 彼らがパフォーマンスを発揮できるようサポートし、彼らとの争いに費やす時間を最小限に減らす。その分のエネルギーを彼らが問題行動を抑えられるようコーチすることに注ぎ込む。
- 「ディーバ(傲慢なスター)」をうまく扱う
- 優れたプロダクトへのこだわり
- とにかくスピードが肝心
- 適切なプロダクトがあり、適切な市場に適切なタイミングで提供できるなら、可能なかぎり早く世に出せ
- 「エンジニアに欲しい機能を指図するようなことをしたら、叩き出すぞ」
- プロダクトマネージャーがエンジニアに伝えるのは、消費者がどういう問題をかかえているのか、どういう人がプロダクトを使っているのか、という背景情報だ。そうすれば彼らは、君ら指図するプロダクトをはるかにしのぐソリューションを生み出してくれる。
- こいったシーンは非常に今の現場でも目にします。要求を出す側が上であり、作る側の立場は下だという意識がこういった勘違いを生じさせるのかもしれません。私も肝に命じたいと思った一文です。
- エンジニアに背景情報を伝える重要性は「スクラム 仕事が4倍速くなる”世界標準”のチーム戦術」でも強く述べられています。非常に重要な観点だと考えます。
- プロダクトマネージャーがエンジニアに伝えるのは、消費者がどういう問題をかかえているのか、どういう人がプロダクトを使っているのか、という背景情報だ。そうすれば彼らは、君ら指図するプロダクトをはるかにしのぐソリューションを生み出してくれる。
- とにかくスピードが肝心
- 解雇する人を手厚く扱う
- 解雇は会社の失敗であって、解雇される側は悪くない
- 解雇しなければならない人に対して、彼らに胸を張ってやめて貰う必要がある
「信頼」の非凡な影響力
- 信頼とは・・・
- 相手の行動へのポジティブな期待に基づいて、進んで自分の脆さを受け入れようとする心理的状態
- 要は信頼している相手には安心して自分の弱さを見せられるか
- 「約束を守ること」、「誠意」、「率直さ」、「思慮深さ」
- 信頼を確立することは、「チームの心理的安全性」を育むための主要な条件
- 今向き合っている相手に細心の注意を払う
- 相手に全神経を集中させ、じっくり耳を傾ける。そうしてから初めて本題に入る
- 相手が言いそうなことを先回りして考えたりせず、とにかく耳を傾ける
- これは私が良くやってしまう失敗の一つでした。つい先読みして話を遮ってしまう反省が良くあります。今は話を最後まで聞くことを意識しています。
- 発見や洞察を促すような質問をしょっちゅうする人は、最高の聞き手だと相手に思われる
- 「勇気」の伝道師になる
- 勇気を奮い起こすようにチームを駆り立てるのはマネジャーの仕事
- 人は生まれつき失敗を恐れ、リスクを怖がるようにできている。だからマネージャーはためらいを乗り越えるよう、部下の背中を押してやらなくてはならない
チームファースト
- エゴと野心を超えてチームをまとめる
- 一人一人のエゴの先にあるものを見通し、全員が力をあわせればどれほどの価値を生み出せるかを理解できる人物が必要
- 問題そのものより、チームに取り組む
- チームの観点から問題を見る。「このチームは問題を解決できるか」
- コーチはより本質的な問いによってチームを導く
- 誰が問題にあたっているのか
- 適切なチームが適所に配置されているか
- 彼らが成功するために必要なものはそろっているか
- 「親身になる許可」を自分に与える
- 部下のことを知り、気にかけると、部下やチームを導くのがずっと楽しくなる
- まずは自分から部下に近づき親身になる。これは非常な重要な一歩だと思います。自分の私的な面、恥ずかしい面をさらけ出すことで、私も親身なる許可を自分に与えようと思います。
- 部下のことを知り、気にかけると、部下やチームを導くのがずっと楽しくなる
パワー・オブ・ラブ
- 「優しい組織」になる
- 「人を大切にするには、人に関心を持たなくてはならない」
- 思いやりを示すことはビジネスにもよい影響がある
- ビルやマークが示したような個別の思いやりは、チーム全体がチームメンバーの痛みに気づき、感じ、反応することに繋がり、「組織としての思いやり」になる
- この観点は逆もまた然りと感じました。組織が相手を思いやらない行動や強制力ばかり取る組織は、ビジネスも悪い方向に進むように思いました。マイナスを見ずプラスを見る。これが重要ですね。
- ビルやマークが示したような個別の思いやりは、チーム全体がチームメンバーの痛みに気づき、感じ、反応することに繋がり、「組織としての思いやり」になる
ものさし
- リーダーは「行動」でその座を勝ち取る
- 人材を最優先し、強力に業務を推し進めるマネージャーは、部下によって「リーダー」と見なされる
- そうしたマネージャーは、リーダーの地位を与えられるというよりは、みずからの行動を通してリーダーの座を勝ち取る
- 自分の成功を測る「ものさし」はなにか?
- ビルには自分の影響力を測る報酬とは別の「ものさし」があった
- 自分のために働いてくれた人や、自分が何らかのかたちで助けた人のうち、すぐれたリーダになった人は何人いるだろうと考える。それが自分の成功を測るものさしなのだ
- 私にとっての成功を測る「ものさし」は何なのでしょうか。正直答えが出ていません。今はまだ答えがありませんが、この答えを出すために考え続けることが第一歩だと考えます。焦らず自答を続けたいと思います。
本書を読み終えて
本書を読み終えて一番感じたことは、プレーヤーからのマネージャーになるためには「チーム・ファーストへ視点を変える必要がある。」という事でした。
プレーヤーは自分の業務や技術等の専門領域を活かし個人としての成果を求められますが、マネージャーはチームとしての成果を求められます。チームでの成果を出すためには、チームの方向性を示しまとめ上げつつ、コーチとしてチームメンバ各人の成長を支える必要もあります。
その両輪がうまく回ってこそ、リーダーとして周囲から認めてもらえる人間になれるのではないかと学びました。
私はまだまだそれができていないひよっこであることから、本書を読むことで足りない点に気づき、重要な一歩を踏み出すことができたように思えます。
本当に学びの多い、素晴らしい一冊でした。
こんど「How google Works」も読んでみたいです!