データ・ドリブン・エコノミー
データ・ドリブン・エコノミー読了しました。
今回は本書からの学びや気づきをまとめていきたいと思います。
私もICT系企業の情報システム担当を長年やっているのですが、今年は自己研鑽の一環として、積極的にデジタルに関する情報収集を行いたいと考えています。
その一つとして、デジタルに関する書籍は通年を通して読書を続ける予定です。
この一冊はそんな中でたまたま本屋に行った際に、内容が面白そうだったことから購入を決めたことがきっかけです。
著者について
- 本書の著者: 森川 博之さん
- 東京大学大学院の工学系研究科にて教授をなさっている方です。ビッグデータ自体の情報ネットワークはどうあるべきか、情報通信技術は将来の社会をどのように変えるのかといった、今後の情報社会の大きな課題に挑まれています。
読書からの学びや気づき
ここからは、本書から学んだ読書の学びや気付きについてまとめていきます。
データ・ドリブン・エコノミーとは何か
『データ・ドリブン・エコノミー(データ駆動型経済)』とはリアルな世界から集めたデータが新たな価値を生み出し、あらゆる企業・産業・社会を変革していく一連の経済活動のこと
- データ・ドリブン・エコノミーの流れ
- 製造プロセス、モビリティ、医療・健康、インフラなどのあらゆる領域においてリアルな世界からデータが収集される
- 収集したデータは、クラウドなどのデータベースに蓄積されてビッグデータになる
- 蓄積されたビッグデータをAIを用いて分析・解析し、現実世界へフィードバックする
- フィードバックされた知見をもとに意思決定を行い、組織にとって最適な活動につなげていく
- デジタル化の進展は新しいものを次々に生み出していく一方で、旧来の製品・サービス、ビジネスモデル、産業を破壊していく。これまでの考え方や行動では未来は拓けない
デジタル革命は「助走期」から「飛翔期」に
- ネグロポンテの未来予測
- MITメディアラボの創設者、ニコラス・ネグロポンテの書籍『Being Digital』で以下のように未来を予測
- 「アトム(物量)から(情報)へ」という言葉で、デジタルがメディア、ライフスタイル、職場環境などあらゆる社会構造を根本的に変容させる
- MITメディアラボの創設者、ニコラス・ネグロポンテの書籍『Being Digital』で以下のように未来を予測
- これまではデジタル革命の「助走期」
- ネグロポンテの未来予測から20年、これまでの過去20年間はデジタル革命の「助走期」にすぎず、本当の意味でのデジタル革命はこれから幕を開け「飛翔期」へ移行していく
データを集めたものが勝機を掴む時代
- プラットフォーマーの強みは膨大な量のデータ
- これまでの勝者はコンテンツと行動情報のどちらか、あるいは両方をうまく集められるプレイヤーが世界を牛耳ることができた
- データを集めたものが勝機をつかむ時代
- これから始める物的資産のデジタル化でも、データを数多く集めてプラットフォームを構成したものが勝つ。これから集めるリアルデータの量は比較にならないほど膨大になる。
- 始めるときにはわからないから、走りながら考えるしかない。データビジネスは走りながら考える中で新たな価値が生まれてくる
- 「ゼンメルワイスの悲劇」の逸話は、データを軽視しないほうがいい、データには真実が隠されているという示唆を与えてくれる
- この逸話は私にとっても衝撃を与えるものでした。データが示す事実に目を向けようせず慣習や思い込みにより行動をしてしまうことの危険性を教えてくれました。
ウェブからリアルへ
- これまではパソコンやスマホに打ち込んだ情報やインターネット上に存在するコンテンツをデータとして集めてきた。これからはリアルデータ(私達が実際に生活したりフィジカル(物理的)な世界から上がってくるデータ)が主役になる。
- リアルデータには、モノから発生するデータだけではなく、スポーツなど人間の行動から生み出されるデータも含まれる
- 現時点で膨大な量のリアルデータを収集している企業は存在しない
価値創出の第一歩はアナログプロセスを見つけること
- データ価値循環
- OECDが2015年にまとめた報告書『OECDビッグデータ白書~データ駆動型イノベーションが拓く未来社会~』にて提唱されたもの。ざっくり書くと以下のような流れの循環
- データフィケーション(アナログプロセスをデジタル化すること)によってデジタル化されたデータが収集されビッグデータになる
- ビッグデータがAIや他のソフトウェアを用いて分析され「知識ベース(時間をかけて学習をして蓄積された知識)」になる
- 分析された知識ベースをもとに、意思決定を行う
- 決定された意思決定に基づき、企業は行動を起こす
- 行動を起こした結果により経済成長と福祉の向上をもたらす
- OECDが2015年にまとめた報告書『OECDビッグデータ白書~データ駆動型イノベーションが拓く未来社会~』にて提唱されたもの。ざっくり書くと以下のような流れの循環
- データ価値循環をのループを回すための価値創出の視点
- 「これまでアナログで行ってきたさまざまなプロセスのうち、何をデジタル化すればこのループに乗せられるか」という視点を持つ
- 日本の生産性の低さはある意味チャンス
- アメリカの生産性水準を100とした場合に、日本の生産性は軒並み下回っている(日本生産性本部「日米産業別労働生産性水準比較(2016年12月)」より)
デジタルによるビジネス変革
- これからは「物的資産のデジタル化」が鍵を握る
- デジタルが裏で動き始めると生産性が上がっていくが、それは一気に変わるものではなく、じわじわと変わっていく。頭を柔軟にし、固定観念や既成概念を取り払わなければ、破壊的イノベーションには気づくことができない
- すべての企業に「事業領域の再定義」が求められる
- 名目国内生産額の産業別構成比のうち、情報通信産業の全体に占める割合は9.6%。これまでのITビジネスはこの9.6%のところで仕事をしていたが、今後様々な産業でリアルデータが取得されるようになっていくと、残りの90.4%も対象となる。
- 製品販売からサービス提供業への転換(サブスクリプション化)は、「やったほうがいい」ステージではなく、「やらなければならない」ステージに来ている
- サブスクリプションに移行することで、顧客の利用データをつぶさに把握できるようになる
- データを見つけるんだという強い思いをもつ
- データから何らかの傾向を見出そうとするときには、「絶対何かがでてくるはずだ」という強い思いが必要。星の数ほどあるデータの中から何らかの傾向を掴むには、見つけるんだという強い思いがないとなかなか難しい
- 実質GDP成長率から見るデジタル化
- 人口が減り続ける日本において労働や資本の増加は見込みにくため、 全要素生産性の向上が重要な役割を担うことになる
- デジタル化の流れを加速し、全要素生産性を向上させ、事業領域の再定義に対処していかなければならない
- 人口が減り続ける日本において労働や資本の増加は見込みにくため、 全要素生産性の向上が重要な役割を担うことになる
- デジタル時代の事業創出
- すでに市場が存在する事業領域に進出することではない。ある事業領域と他の事業領域との間に、新たな事業領域を創出すること
- 複数の事業領域の企業とウィン・ウィンで連携し、新たな市場を作り上げるには、これらのリソースを上手に使いこなして大企業主導のイノベーションを起こすことが欠かせない
- すでに市場が存在する事業領域に進出することではない。ある事業領域と他の事業領域との間に、新たな事業領域を創出すること
デジタル化で社会の生産性を高める
- これからのIT⇒「エクスペリエンスとしてのIT」と「社会基盤としてのIT」
- エクスペリエンスのIT:顧客に「面白い」「心地よい」「嬉しい」といった感情を呼び起こす
- 社会基盤としてのIT :工場、社会インフラなどのアナログだった部分をデジタル化することで新たな価値を生むIT
データ・ドリブン・エコノミーで価値を創出する視点
- 「何をデジタル化するか」の視点をもつ
- インターネットにつながっていないもの、いま現在アナログでやっている作業に着目する
- デジタル化をすすめる上では、他の関連業界が絡んだ大きなエコシステムを作れるかどうかにかかってくる
- 多様性が重要。異なる業界の人が集まるときには、歩み寄れる何かがないと厳しい。
- 利他と共感の観点から考えないと異業種間連携はうまくいかない
デジタル化をすすめるために
- デジタル化のキーワードは「多様性」
- デジタルの専門家だけで話していてもデジタル化は進まない。いろいろな分野、属性の人たちと接点を持ち、多様性を受け入れられる準備をしておかなければ、デジタル社会には乗り遅れる
- 「ダイバーシティ」ではなく「インクルージョン」
- インクルージョンはさまざまな人が集まって、お互いを法要しているようなイメージ。そうした人達が集い、常に走りながら考える姿勢をもてば、必ずチャンスは生まれる。その姿勢ことがデータ・ドリブン・エコノミーを推進する原動力になる
本書を読み終えて
本書を読む前と読んだ後においての、私のデータに関する価値の考え方がガラッと変わったような気がしています。
ICT業界にいれば、これからの社会はデータが大事だということは抽象的にはわかっている人はたくさんいるかもしれません。
ですが実際の現場において、「どんなデータが貴重なのか」、「どうやって集めればよいのか」、「データ収集においてどんな視点を持てばよいのか」というところにまで踏み込んで理解している、考えようとしている人はなかなかいないかもしれません。正直私もその中のひとりでした。
ですが本書を読むことで、少なくともどういういった視点や考え方でデータに向き合えば良いのかは理解することができたように思えます。
さらには仕事の領域だけでなく、普段私が行っている活動、例えば少年野球などの領域においても、デジタル化できるものが無いかを探すことで、データ・ドリブン・エコノミーに関するアンテナを高める事ができるのではないかと考えています。
本書でも述べられていますが、いきなり大きなものではなく、小さくても良いので私の行える範囲からデジタル化に取り組んでみようと思います。
本当に勉強になった一冊でした。いつか、森川さんのセミナーなどがあれば行ってみたいなと思います。