科学に基づくフライボール打法
フライボール革命が有効なのか、私なりに結論づけようと購入した本書を読了しました!
今回は本書からの学びや気づきを記事にさせていただきます。
近年、野球界に衝撃を与えたフライボール革命。
ざっくりとは知っていてもその詳しい所まで分かっている人は少ないように思えます。実は私もその一人で、極端な言い方をすれば、
「メジャーリーグやプロ野球では、守備力が高いのでゴロを打っても取られてしまう。なので、アッパースイングでホームランを打てば誰も取れないからそっちの方が有効だ。」
くらいの理解でしかありませんでした。
つまりは、フライボール革命はトップレベルの人達にのみ有効で、少年野球の現場では役に立たない理論なんだろうという意識さえ持っていたのも事実です。
実際、少年野球の現場では未だに「ゴロを打て!フライは打つな!」という指導が根付いています。私としてもどちらが正しいのかわからず、子供達を迷わせる指導をしていた可能性があります。
そこで一度、書籍を読んでフライボールについて学び、私の中で、どちらが良いのか解を出したいと思ったのが本書を手にとったのがきっかけです。
さらに言うと、その対象は少年野球をしている子供達に対してです。
「近年騒がれているフライボールを狙う打法(アッパースイング)が良いのか、それともこれまで通り、ダウンスイングをしてヒットを打つのが良いのか。」
本書を読むことで何かしらの答えを出せるはず。
そんな期待をして本書を読み進めました。
読書からの学びや気づき
本書は非常に目から鱗の情報ばかりで、記事には表しきれないほどでした。
一部とはなりますが、各章ごとに私の学びや気づきを記していきたいと思います。
はじめに
- 指導理論は十人十色。1つの理論で選手を縛ると、たまたまその理論が当てはまる選手であればよいが、その理論に合わない選手はのびない
- 多くの引き出しを持ち、その人にマッチした見いださなければならない
アッパーのスイング軌道とフライボール革命
- ダウンスイングやアッパースイングはボールの軌道とバットの軌道が重なる場所が一点しかない
- 理想的なのは、「地面に対して水平」ではなく、ボールの軌道に対して水平」に振ること
- ゴロを打って安打になる確率は25%だが、外野フライなら27%。長打になる確率は頃だと2%だが、外野フライなら27%
- 作戦上の関係でゴロを狙うケースはあるが、普段から「ゴロを打て!」と言い続けるのは良い指導とは言えない
- バレルゾーン=「打球速度(初速)」と「打球角度(発射角)」を組合わせて分析した結果、打者が好成績を上げているスイートスポット
- 打球速度が158km、打球角度26~30度で打てば、バレルゾーンに入った打球とみなされる
- バレルゾーンに入ると、打率:.822、長打率:2.386(全ての打席を平均して二塁打以上)の結果が出ている
- バレルゾーンで打つためには、以下の条件を満たす必要がある
- 地面から19度上向きのアッパースイング
- 128Km以上のスイングスピード
- ボールの芯から6ミリ下をバットの芯で強く叩く
- 158Km以上の打球速度を出す
- OPS(On-base plus slugging) = 出塁率 + 長打率
- 同じアウトを取るとしても、以下の②、③をされると、投手からすれば次の打席が怖くなる
- 打者が三振をしないようにとスイングスピードを落としてきて何とかバットに当てられた場合
- 打者がフルスイングをしてきて三線となった場合
- 打者がボールをしっかりと引きつけてとても高いフライを打ち上げた場合
- ヒットを量産して打率を求めていきたい場合は、スイング軌道が合う約5~10度上向きのスイング軌道が理想
- 将来的にホームランバッターを目指すなら「約19度上向きのスイング」、AVGヒッターを目指すなら「約5~10度」上向きのスイング
- バットでボールの中心よりも上を叩くと、基本的に打球はゴロになるが、ダウンスイングで打つと逆回転になり、地面に接触するとスピードが一気に減少してしまう
- 軟式野球の場合は高いバウンドになりやすいが、これは最初から打ち損じを練習しているのと同じこと
スイングのメカニズム
- 回転運動と並進運動をいかに組み合わせるかがスイングの根幹となる
- 投手方向への並進運動が大きすぎるとボールにわざわざ近づくことになり、体感スピードがより早くなって詰まりやすくなる
- 実は長男がまさにこのパターンに当てはまっており、現在修正を試みている最中です。長男はスライドをしてするタイプの打者なのですが、動きが大きすぎることが多く、体が前のめりになりがちのため、この点は気をつけていきたいと考えています。
- メジャーの打者たちは、できる限り並進運動中のムダをなくし、回転運動に比重を置いて打っている
- 投手方向への並進運動が大きすぎるとボールにわざわざ近づくことになり、体感スピードがより早くなって詰まりやすくなる
- ステイバック:インパクトからフォローするーまでの間で、軸足に体重がかかった状態のこと
- 右打者を背中側(三塁側)から見たとき、全体の形が漢字の「入」ではなく「人」になっているば、ステイバックができている
- 128Km以上のスイングスピードを生み出すためには、除脂肪体重が65Kg以上あれば良い
- ホームランを打てる体を作ろうと考えた場合、ポイントとなるのは体格の大きさではなく筋肉量
さらなる技術向上のために
- バレルスイングをモノにするための4つの進言
- スイング速度128km以上
- スイングの上向き角度約19度
- 筋力トレーニング
- 今までの指導に打ち勝つ信念
- 科学の進歩により、昔の常識は今や非常識に変わっている。その事実を受け入れ、うまく採り入れていくのが良い指導者
- 小学生の年代というのは、神経系が著しく伸びる時期
- このタイミングで巧緻性(頭で思い描いた通りに自分の体を使える能力につながる部分)を高めておくことで、大人になってレベルの高い技術を教わったときにもパッと表現できるようになる
- コーチの意味には「大切な人達を目的地まで安全に送り届けなければならない」という意味がある
- コーチである以上、そこでの指導が選手たちの人生を左右しかねない。永久的に勉強し、自分が経験をしてきたこと以外の事柄もしっかり学ばなければならない
- 最優先にすべきは「野球はなんて楽しい遊びなんだ!」という魅力を伝えること
- 最後の二項目については、読んだ瞬間とても胸に刺さる思いがしました。コーチである以上指導される側の子供達をしっかりと成長させる責任があります。その意識を常に旨に受け止めて、日々学びを続けていこうと思いました。
- 最後の二項目については、読んだ瞬間とても胸に刺さる思いがしました。コーチである以上指導される側の子供達をしっかりと成長させる責任があります。その意識を常に旨に受け止めて、日々学びを続けていこうと思いました。
本書を読み終えて
初めに本書を読み終えた、私の問いに対する回答からお話すると、
「狙う角度は各人により異なれど、アッパーの軌道でのスイングが理にかなったバッティングである」
ということです。本書を読んだ後に、通常の打撃練習においてダウンスイングの指導をすることはもはや考えられません。
(ただし、戦術的にゴロを打つ必要がある場合は例外です。)
本書は私にとって、求めていた情報が豊富に詰まっており、読みながら私の中で衝撃が走りまくっていました。正直な話、少年野球の打撃指導をなさっている方は間違いなく読んだほうが良い書籍です。素晴らしい内容でした。
本書の構成としては、
- はじめに → 理論や数値根拠、考え方を説明 → 実践に向けたトレーニング方法の紹介 → まとめ
という流れとなっていることから、求める情報から先に読むことも可能です。
私は実際のトレーニング方法よりかは、理論や考え方を学ぶために購入したため、前半において様々な気付きを得ましたが、既にフライボール打法を理解し、どう習得するかを学びたい方にとっても間違いなく役に立つ一冊です。
(私としては吊りティーが欲しくなりました。)
先日読んだ新しい少年野球の教科書も学ぶところが多かったですが、本書も非常に学ぶところが多かった一冊です。
野球関係者の方にとっては間違いなくオススメできます!
冬休みの読書の一冊に是非手にとって見てください!