新しい少年野球の教科書
普段の読書は主にビジネス系の書籍が多いのですが、今回は野球関係の本を手に取ることにしました。
今回は「新しい少年野球の教科書 科学的コーチングで身につく野球技術」という本からの学びや気付き、感想を記事にまとめたいと思います。
本書を読もうとしたきっかけは大きく二点あります。
- 今教えている指導方法が科学的にも合理的であるかを確認したい
子供達に少年野球を指導するにあたり、常々思っていることで、
「今教えている指導方法が、子供達にとって合理的(適切)なアプローチなのか」
ということが、自分の中で腑に落ちていないまま指導している練習内容が少なからず存在しています。昔からこの練習をやり続けているからそのままやっている、昔からこうやって教えてきたんだ、という理由が当てはまってしまうような練習内容や指導方法は、極力少なくしたいという思いから、そのヒントがこの本から学ぶことができるかもしれない。
そういった考えから、本書を手に取りました。
- 新しい指導方法や練習方法を取り入れるためのインプットが欲しかった
そして、もう一点。
子供達にとって同じような練習方法を続けることは、どこかのタイミングで必ず飽きが生じてきます。
そのため少年野球の指導者にとって、新しい練習方法を考え、取り入れるということは永遠のテーマではないでしょうか。私も同じであり、練習にも新鮮さを取り入れたいという思いから、本書を手にとったというのも理由の一つです。
読書からの気付き
私が本書から学んだことは非常に多かったと感じています。
普段私はブログ記事を更新する前に下書きでOne Noteを利用して記事を書くのですが、気づきの箇所が結構なボリュームになってしまっていました。
そのため、その中でも特に学びがあったものに抜粋して記事に書かせていただこうと思います。
はじめに
- 成長段階の子供たちには、できることとできないこと、教えたほうがいいことと教えないほうがいいことがある
- 自身の経験則だけで指導をしたり、技術的なミスに罵声を上げたりしていたら、野球を選ぶ子が減っていくのは当然の流れである
- 小学校3年生ぐらいまでは「野球のルールを自然と覚えていくような簡易ゲーム」を楽しみつつ、「キャッチボールが徐々に成立していくような工夫」を入れて、野球選手としての技術を高めていく
吉井コーチのインタビューから
- 何より大事なのは、子供の頃から自分で考えて行動する習慣をつけてほしい
- (気づき)吉井コーチがコメントされている内容は、他のプロ野球関係者や、高校/大学野球の指導関係者の方からも良く耳にするコメントだと感じています。そして、この考え方は一般的なビジネスにおいても同様の事が言えると考えます。
自らが課題を設定し、その解に向けたアプローチを見出し、自分で課題を解決する。そしてまた新たな課題を設定し自己成長を高めるというサイクルを回せるかはスポーツの世界においても重要なのだと感じました。
- (気づき)吉井コーチがコメントされている内容は、他のプロ野球関係者や、高校/大学野球の指導関係者の方からも良く耳にするコメントだと感じています。そして、この考え方は一般的なビジネスにおいても同様の事が言えると考えます。
子供と大人の身体は違う
- 子供の体は発展途上であり、「できること」と「できないこと」がはっきりしている
- 中学生で骨端線(骨の中央部と端の間にある軟骨)が閉じれば、器具を使った筋力トレーニングのような強度の高い練習をしても、故障のリスクが低くなる
- 速い球を投げようと腕を振れば振るほど、ヒジにかかる負担は大きくなる
- ヒジが痛くなる選手の95%は小・中学生の時期に痛めた経験を持つ
- ヒジに痛みを覚えた場合は、スポーツ整形外科を受診するようにしてほしい
- 一般的な整形外科よりも投球障害に関する知識が豊富なドクターが多い
- 一般的な整形外科よりも投球障害に関する知識が豊富なドクターが多い
- 障害リスクのガイドライン
- ABF(全米野球協会)が定めた「少年野球選手の障害リスクのガイドライン」のこと
- このぐらいの球速や距離を投げていると、投球障害のリスクが高くなるよという指標
- 12歳までの年齢の時に、平均80キロ、最速104キロ、遠投飛距離66メートル
- 日本では「すごい投手が現れた!」だが、アメリカでは「投球障害のリスクが高いのでほかのポジションを守らせよう」
(気づき)この意識の違いは正直驚きました。今の日本だと、「こんな凄い子はどんどん試合に出て頑張ってもらおう」となるのが普通な認識でした。日本においても、アメリカの先進的な考え方をどんどん学ぶ必要があることを学びました。
- 日本では「すごい投手が現れた!」だが、アメリカでは「投球障害のリスクが高いのでほかのポジションを守らせよう」
- ガイドラインに該当する子供は、自分が耐えられる力以上の負荷が骨や筋肉にかかっている
- 少年野球の投球数の目安は40~70球、最低で中2日は休みを入れるべき
投手の指導法
- 指導者として気をつけたいのは「教えすぎない」ということ
- 細かいところを言われるほど意識しすぎてしまい、どうしてもぎこちない動作になりやすい
- 細かいところを言われるほど意識しすぎてしまい、どうしてもぎこちない動作になりやすい
- 「ヒジを上げなさい」はNGワード
- 子供にとってヒジを上げることは簡単な動作ではない
- ボールの握りとヒジの位置は密接に関係している
- 指導者の心構えとして、ボールを正しく握れるようになるまでは技術的な指導は控える
- 指導者の心構えとして、ボールを正しく握れるようになるまでは技術的な指導は控える
- ピッチャーで大事なのはフォームの再現性
- フォームが崩れ始めた時が、そのピッチャーの交代時期と判断するのも障害予防につながる
- フォームが崩れ始めた時が、そのピッチャーの交代時期と判断するのも障害予防につながる
守備の指導法
- ポジションを固定しない
- 小さいうちから色々なポジション、さまざまな動きを経験させてあげるべき
- できる・できないに限らず、多くのポジションを守る経験がその後の野球人生に行きてくる
- ゴロ捕球のキーワードは「お尻は高く、頭は低く」
- 一番の目的はグラブを下げることにあり、この姿勢が作れれば、グラブを下から上に使えるようになる
- 一番の目的はグラブを下げることにあり、この姿勢が作れれば、グラブを下から上に使えるようになる
- スナップスローを身につける
- スナップは「手首」ではなく、「何か一部分を切り取る」という意味が正しい
- スナップスローは肩から先の動きを強調して投げる技術
打撃の指導法
- 小学生や未経験の子供たちを見る時には、「しばらく放っておく」ことを心がける
- 「細かいことは言わずに静かに見守る」
- バット選びの考え方
- 片手でバットを持って、肩の高さまで上げたときに、バットを寝かせた状態で5秒間キープできるかを基準にする
- バットの重さに負けて腕が下がってくるようであれば、自分の体に合っていないと判断する
- 重いバットを振りすぎないようにする
- 重いバットの振り過ぎは、「腰椎分離症」の原因の一つになる
実は私が高校生の時に野球をやめたきっかけも腰椎分離症でした。私の場合は直接の原因が重いバットの振り過ぎではなかったかもしれませんが、腰椎分離症と宣告されたその時のショックは今でも忘れられません。
子供たちから少しでも怪我をなくすリスクを減らせるのであれば、体に良いとされない指導方法は極力減らすべきだと考えます。
- 重いバットの振り過ぎは、「腰椎分離症」の原因の一つになる
- インサイド・アウトスイング習得に向けた練習法
- 自分の体の後ろ側に障害物を立てて、それに当たらないようにスイングする
- 真横からのトスをセンター方向に飛ばすティーバッティング
- 引っ張った球しか飛ばない選手は、ドアスイング気味のスイングを判断することができる
- 引っ張った球しか飛ばない選手は、ドアスイング気味のスイングを判断することができる
- インパクト角が0に近いほど変換効率が上がっていく
インパクト角:スイングの方向とボールが飛び出す打球角度
ジュニア期のコーチング
- 「きわめる」から「わきまえる」へ
- 大人がきわめすぎようとすると、子供に過度な負担がかかってしまう
- 大人がきわめすぎようとすると、子供に過度な負担がかかってしまう
- コーチングの5つのポイントより
- できないことを叱るよりも、できたことを褒めて認めてあげる
- 野球の技術も心の成長も右肩上がりではない
- 「野球だけ」をやり続けるのは健全ではない。他のスポーツや遊びから覚えることや気づくこともある
- 9歳ぐらいから論理的思考を育む。「ハイ」「イイエ」で終わらないようにする
- 何でもかんでも大人が教えていては、指示を待ったり、教えてもらったりするのが当たり前になってしまう
本書を読み終えて
少年野球の現場で子供達に指導をしている方であれば、間違いなく読んで損はないと感じた書籍です。
技術的な面での学びももちろんありますが、大きい学びとしてあったのが、
「子供達への指導スタンス(指導に対する考え方・方針)の意識を変える必要がある」
ということでした。
特に本書を読んだ中での私が抱いた重要な点は3点あり、
- 教えすぎない
- 叱る指導よりも褒める指導
- 今ではなく将来を見据える
ということでした。
特に小学生に対して「教えすぎない」という点は非常に重要な気づきだった考えます。
この本を読む以前は、私も気になる点は細かくても指摘をしている節がありました。良い結果を生んだこともあったかもしれませんが、子供達が細かい点を気にしすぎるようになり、その逆の結果の方が多かったように思えます。
そうした反省も踏まえ、私も今は極力、
「子供達の自主性を尊重し、野球を楽しめるような雰囲気と仕組みづくり」
を中心に考えるようにしています。
それを気づかせてくれただけでも非常に学びを与えてくれた一冊だと思います。
少年野球に携わられている方でしたら、是非一度手にとって見てください!